松竹映画に出てくる「いいセリフ」をご紹介します。
自分をいじめることはねぇ
てめぇでてめぇを大事にしなくて
誰が大事にするもんか
その他のちょっと良いセリフ
生き延びるため、時には長きものにも巻がれなければならぬ!
来てしもうたがです。諦めてばっかりおるがは、嫌です。
あて、いっぺんぐらい、あての思う通りにしたかったがです。

「薄化粧」より
妻とまだ幼い息子を含む四人の殺人容疑で収監されていたが脱獄、指名手配中の坂根藤吉(緒形拳)は、逃亡先で小さな飲み屋を営むちえ(藤真利子)と出会う。別の女を作った夫に捨てられた経験により、愛し愛されるということを諦めていたちえは、坂根と交流するうちに、いつしか惹かれていたのだった。一方、欲望と獣性の赴くままに犯罪を犯し続けてきた坂根にとって、ちえは初めて会った菩薩のような女だった。しかし、坂根の逮捕に執念を燃やす刑事・真壁(川谷拓三)の追跡が間近に迫っていることを悟った坂根は、ちえの元から去ろうとする。このセリフは、そんな坂根を駅まで追いかけて着たちえによるものです。すべてを投げ捨ててまで、愛する男にすがろうとするちえの、愛を、幸せを、人生を諦めたくない心の叫びでした。しかし、真壁が坂根を追い詰める決定的な手掛かりとなったのは、皮肉なことに、他ならぬちえという存在だったのです…。
いいか人間誰しも欠点というものがあるんだよ。
自分を醜いと知った人間は決してもう醜くねえって。
女抜きで引っ越しができるとお思いですか?

「引っ越し大名!」より
藩の存亡を懸け、姫路(兵庫)から日田(大分)へ、移動人数10,000人、距離600Km、予算なし・・・という過酷な国替え=引っ越しの仕切り役「引っ越し奉行」を仰せつかった、ふだんは書庫にこもって本を読んでばかりの引きこもり侍・片桐春之介(星野源)。
柄に合わない任務と前途多難におののく春之介は、幼馴染で武芸の達人・鷹村源右衛門(高橋一生)や前任の引っ越し奉行の娘である於蘭(高畑充希)に助けられ、知恵と工夫なしではまず成し遂げられない一大事業=引っ越しに臨みます。
これは目の前の、そしてこれから間違いなく降りかかって来るであろう無理難題の数々に怖気づく春之介たちに向けた、於蘭によるこのうえなく頼もしく力強いセリフです。自信、そして前任の引っ越し奉行の娘であることの強い自負心に満ちた威勢のいいひと言は、春之介たちを見事に鼓舞したのでした。
…ちなみに余談ながらも、筆者個人的に、過去に経験した幾度かの引っ越し全てにおいて、間違いなく母や妻が居たればこそテキパキと合理的に事が進んだと、心の底からの感謝と共に、強くそう思っております。
ある年齢に達したら、一切仕事から離れて、鮭のように故郷に帰って暮らしたい。かねがね私はそう考えて参りました。
いろんなことがあって
だんだんほんとうの夫婦になるんだよ

「早春 」より
数年前に幼い息子を病気で亡くして以来、倦怠期を迎えていたサラリーマンの正二(池辺良)と昌子(淡島千景)の夫婦は、正二が女友達・キンギョこと千代(岸恵子)の積極的な誘惑に負け、犯してしまった一晩の過ちが発覚し、夫婦関係の危機を迎えていました。最初はとぼけて煙に巻く正二でしたが、怒りのあまり家を出たきり戻らない昌子の強硬な姿勢に、焦りと反省、贖罪の気持ちで心がいっぱいになります。そんな中、東京から遠く岡山の山間地へと転勤を命じられていた正二の引っ越しの日が近づきます。結局引っ越し当日になっても昌子は戻らず、独りさびしく旅立った正二は、旅の途中、転勤で琵琶湖畔に住まう会社の先輩・小野寺(笠智衆)を訪ねます。
このセリフは、正二と昌子の結婚の仲人を務め、ふたりをよく知る小野寺が、正二にしみじみと、噛んで含めるように言った一言です。悪行は、開き直ったり、ましてや繰り返すなど論外です。素直に謝り、猛省すること。諍いの火種はまだ小さいうちに、取り返しのつくうちに歩み寄って消すこと。それでも色んな摩擦が起きるかもしれないし、負った心の傷は消えないかもしれないが、それを乗り越えることが夫婦をより強靭な関係に導いてくれること。負った心の傷は、完全には消えません。ただ、それでも心から謝り、誠意を示すこと。また可能な限り許そうと努力すること。そうして至った再生が、夫婦愛の成熟したかたちなのではないか?人生の先輩の含蓄が、味わい深く心に沁みます。
お前もいずれ、恋をするんだなぁ。あぁ、可哀想に。
旅というものはな、行き先を決めてから出かけるもんじゃねえんだよ。

「男はつらいよ 寅次郎の縁談(第46作)」より
上手く行かない就職活動に身も心も疲弊し消耗し切った満男(吉岡秀隆)は、そのストレスとフラストレーションから父・博(前田吟)と大喧嘩をし、家出してしまう。しばらく経って満男からの便りが届き、瀬戸内海にある島に滞在していることを知りホッと胸をなでおろす母・さくら(倍賞千恵子)たちが、満男がなぜそこに行ったのかを疑問に思っている様子に、久しぶりに帰ってきた寅次郎(渥美清)が言った言葉。ある土地に行くにあたって特に目的が無くとも、その時々の気分だけでじゅうぶん理由となる、堅苦しく生きるのではなくリラックスして生きよと言っているような、寅次郎の気ままな人生観を象徴するようなセリフです。






