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松竹映画に出てくる「いいセリフ」をご紹介します。

生きてる?そら結構だ。

「男はつらいよ 寅次郎紅の花(第48作)」より

寅次郎(渥美清)が久しぶりにくるまやに電話すると出たのは、自分と会ったことがないどころか自分のことを知らない若い店員で、さくら(倍賞千恵子)ほか皆が出払っていると言う。店員との会話も続かず、言うに事欠いて皆が生きていることを確認した寅次郎が言い放ったセリフです。通り一遍の社交辞令のような、よくある生存確認ではありますが、寅次郎がひと安心したのは事実でした。家族、とりわけ年老いた両親や親せきと離れて暮らしている人には、この思い、共感するものがあるのではないでしょうか?大事な人々が「生きてる」ことは、それだけで「結構」なことなのです。

その他のちょっと良いセリフ

いろんなことがあって
だんだんほんとうの夫婦になるんだよ

「早春 」より

数年前に幼い息子を病気で亡くして以来、倦怠期を迎えていたサラリーマンの正二(池辺良)と昌子(淡島千景)の夫婦は、正二が女友達・キンギョこと千代(岸恵子)の積極的な誘惑に負け、犯してしまった一晩の過ちが発覚し、夫婦関係の危機を迎えていました。最初はとぼけて煙に巻く正二でしたが、怒りのあまり家を出たきり戻らない昌子の強硬な姿勢に、焦りと反省、贖罪の気持ちで心がいっぱいになります。そんな中、東京から遠く岡山の山間地へと転勤を命じられていた正二の引っ越しの日が近づきます。結局引っ越し当日になっても昌子は戻らず、独りさびしく旅立った正二は、旅の途中、転勤で琵琶湖畔に住まう会社の先輩・小野寺(笠智衆)を訪ねます。
このセリフは、正二と昌子の結婚の仲人を務め、ふたりをよく知る小野寺が、正二にしみじみと、噛んで含めるように言った一言です。悪行は、開き直ったり、ましてや繰り返すなど論外です。素直に謝り、猛省すること。諍いの火種はまだ小さいうちに、取り返しのつくうちに歩み寄って消すこと。それでも色んな摩擦が起きるかもしれないし、負った心の傷は消えないかもしれないが、それを乗り越えることが夫婦をより強靭な関係に導いてくれること。負った心の傷は、完全には消えません。ただ、それでも心から謝り、誠意を示すこと。また可能な限り許そうと努力すること。そうして至った再生が、夫婦愛の成熟したかたちなのではないか?人生の先輩の含蓄が、味わい深く心に沁みます。

燃えるような恋をしろ。大声出してのたうち回るような、恥ずかしくて死んじゃいたいような、恋をするんだよ。

「男はつらいよ 拝啓車寅次郎様(第47作)」より

大学時代の先輩の妹・菜穂(牧瀬里穂)とのロマンスを経験した満男(吉岡秀隆)、長年連れ添った夫との倦怠に悩む主婦(かたせ梨乃)との淡い恋を終えた寅次郎(渥美清)。共に琵琶湖畔で失恋を味わったふたり。大学を卒業し社会人となった甥との絆は更に深まったが、かわいい甥への愛情あふれる伯父の視線は変わらない。そんな寅次郎が、再び新たな旅に出る別れ際に満男に残した言葉。物語の前半で久しぶりに満男と再会した寅次郎が投げかけた「燃えるような恋愛してるか」と呼応する、大人の男の先輩としての根源的な力強いエールの言葉。

いつも言ってるでしょ。そういう難しいソクラテスみたいな顔してたら魚は寄ってこないんだって。柔らかく柔らかく待ってないと。

「釣りバカ日誌10(第11作)」より

何と会社を辞めてしまったスーさん。ビル管理会社にシニア社員として働くが、そこで知り合った若者(金子賢)とその恋人(宝生舞)の結婚式のために北九州を訪れ、釣りを楽しむハマちゃんとスーさん。「人間の偉大なる行動力とは?」と哲学的な質問を問いかけるスーさんに、ハマちゃんが返すセリフ。

諦めずに愛してやれば、必ず直ります。一番大事なのは絶対に直るって信じることです。

「8年越しの花嫁 奇跡の実話」より

"尚志(佐藤健)が、かつて社長(北村一輝)に言った言葉を、社長が今の尚志へのエールとして贈る言葉。
病気と車の修理を一緒にしてはいけないという前置きをしながらも、ひたむきな愛がきっと奇跡をもたらすはずだと背中を押す言葉であると同時に、尚志という人間の優しくて真っすぐな性格を感じさせる素敵な言葉です。"

思い切ってなんでも言ったらいいさ、惚れてますとか、好きですとか。

「男はつらいよ 寅次郎子守唄(第14作)」より

恋心を告白できずに悶々と過ごす青年・大川(上條恒彦)に寅次郎(渥美清)がかけた言葉。それは至極ストレートな恋愛指南でした。何はなくとも先ずは思いを伝えないことには始まらない、当然進展もありません。これは自らアクションを起こさなければ事態も動かないという点で恋愛に限らず普遍性があり、仮に成功・成就せずとも諦めがつく、結果を問わず後悔しない生き方への指南とも言えます。ちなみに大川の恋の相手は、寅次郎も恋する看護師・木谷京子(十朱幸代)。寅次郎に背中を押された大川の告白の結果、京子の答えは…?

幽霊よりも、人間のほうが恐いってことです。

「さんかく窓の外側は夜」より

幼い頃から幽霊が見える特異体質に悩まされている書店員・三角康介(志尊順)は、除霊師・冷川理人(岡田将生)と出会い、共に除霊作業の仕事をすることになった。ある日、ふたりは刑事・半澤(滝藤賢一)から、未解決殺人事件の捜査協力を持ちかけられる。それは、想像を絶する、常軌を逸した、怨念渦巻く阿鼻叫喚地獄の始まりだった。真相に迫ってゆくなか、康介が恐怖、そして諦念めいた感情とともに呟いたセリフ。それは、悪意や殺意といった確実な強い意思を持ち狂気を宿すのは、幽霊でも何でもなく、自分たち人間だという恐怖。いちばん恐いのは人間。あらゆる事象に通じる真理なのかもしれません。

旅というものはな、行き先を決めてから出かけるもんじゃねえんだよ。

「男はつらいよ 寅次郎の縁談(第46作)」より

上手く行かない就職活動に身も心も疲弊し消耗し切った満男(吉岡秀隆)は、そのストレスとフラストレーションから父・博(前田吟)と大喧嘩をし、家出してしまう。しばらく経って満男からの便りが届き、瀬戸内海にある島に滞在していることを知りホッと胸をなでおろす母・さくら(倍賞千恵子)たちが、満男がなぜそこに行ったのかを疑問に思っている様子に、久しぶりに帰ってきた寅次郎(渥美清)が言った言葉。ある土地に行くにあたって特に目的が無くとも、その時々の気分だけでじゅうぶん理由となる、堅苦しく生きるのではなくリラックスして生きよと言っているような、寅次郎の気ままな人生観を象徴するようなセリフです。

私はね、ハマちゃんが二枚目じゃないから好きになったのよ。

「釣りバカ日誌3(第3作)」より

「スーさんは若い頃ハンサムだったでしょうね」、と言われて焼きもちを焼いたハマちゃんにみち子さんがかける言葉。やさしさに溢れています。

行かなくては。
止まっちゃいけない。

「夜の片鱗」より

昼は工場、夜はバーで働く19歳の芳江(桑野みゆき)は、駆け出しのヤクザ組織の下っ端・英次(平幹二郎)の情婦となった。惚れた弱みか、組織への上納金の無心など英次の頼みを断れない芳江。一方でうだつの上がらない日々を送る英次は組織での出世も叶わず、単なる芳江のヒモに成り下がっていた。やがて英次の鬼畜っぷりはエスカレートし、遂には芳江に売春を強要するようになった。さすがに気持ちも肉体も悲鳴を上げ耐えきれなくなる芳江。しかし、英次がどうしようもない男と知りつつ離れることのできない複雑な心理に揺れ動き翻弄され、結局逃げだすことができない。そんなただひたすらに堕ちていく日々の中、建築技師の藤井(園井啓介)と出会う。芳江に惚れた藤井は、なんとかして芳江を救い出し、自分の転勤先に連れて行き、結婚して幸せに導こうとするが…。
このセリフは、そんな藤井の求愛に応えたい、すなわち英次との地獄のような日々から脱出したい気持ちを必死に自分に言い聞かせる芳江の心の叫びです。しかし、英次により消えない焼き印を刻まれたかのような芳江は、まるで薬物中毒からの脱却さながらに苦悶するのです。また、英次との関係は救われようの無い共依存の域に達していたとも見ることができます。良くも悪くも、男女の関係は簡単には断ち切れない、理屈では説明できないような抗い難い引力により否応なく結び付けられ、人はそれを時に優しく「腐れ縁」と言ったり、時に厳しく辛辣に「呪縛」と突き放したりします。とにかく、強く結びついてしまった悪しき関係の切断には、このセリフのような強い気持ちが、最低限必要なのです。

ちゃんと知ってるのよ
前の奥さんにこっそり会ってるってこと

「この子の七つのお祝いに」より

当然ながら、これは奥さんから旦那さんへの言葉です。そのうち、おそらく最も恐ろしい部類のものです。
「前の奥さん」の部分には幾つかのバリエーションが当てはまり、そうなると夫婦に限らず恋愛関係全般に範囲は広がると思いますが、
いずれにせよ言われた立場としては背筋がゾッとするセリフです。
特に本作のこのセリフのように、突然笑いながら言われた場合、恐怖きわまり、反射的な高速で土下座し謝罪してしまうかもしれません。
ともかく、不実な行為はしないにこしたことはありません。実態は健全なものであっても、不実を疑われる行為は避けたいものです。
誠実に生きたいものです。

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