その他のちょっと良いセリフ
ゆっくり知っていけばいいさ。夫婦なんだから
世間にはね、したくなくてもする必要がある事がたくさんあんのよ

「乾いた湖」より
事業家だった父が政界汚職に巻き込まれ自殺、残されたのは母、姉、妹(岩下志麻)の女三人家族と巨額の税。
そんな三人の生活を支えているのは、姉が稼いでくるお金。では、姉はどうやって稼いでくるのか?どんな仕事をしているのか?
その答えは、愛人稼業でした。しかも、その相手は、父を自殺に追いやった悪徳政治家。
姉は父を殺した男の愛人になり、その愛人手当で残された三人が生活できていたのです。
そしてその首謀者は、なんと母でした。まだ嫁入り前の姉を、男に愛人として差し向けたのです。
そんな衝撃の事実を知り半狂乱で反発する妹に、母が諫めるように放った、あまりに現実的すぎる言葉がこの酷薄なセリフです。
もしかしたら、夫を自殺に追い込まれ実質的に殺されたことで、母の理性と思考のタガが外れてしまったのかもしれません。
ただ、残された三人がお金を稼いで生きて行かねばならない事は現実。母は強し。
その傍らには、ただただ涙ながらに妹に謝る姉の姿がありました。
毎日続けて仕事があるってのは結構なことだよ

「故郷」より
瀬戸内海の小さな島に住む精一(井川比佐志)、民子(倍賞千恵子)の夫婦は、石船と呼ばれる小さな木造船で石を運び、年老いた父(笠智衆)と二人の子供と生活する糧としていました。大資本家が機械化の進んだ最新の大型船を使い効率よく合理的に作業を遂行するこの時世に、小さな古い石船に執着するのは無駄だと言われ、それを分っていながらも、この生活に深い愛着のある二人でした。
しかし、船のエンジンの不調と高額で見通しのつかない修理、今の石船を諦め工場で働かないかという義弟の勧めなどで、次第にこの故郷を離れる決心を迫られる精一と民子。瀬戸内工業地域の巨大なコンビナート群が、精一の心に重い影を落とします。そして、実際に工場を見学した精一は、重大な決断を迫られることになるのです。
このセリフは、上述したような、いわゆる産業の進化、資本主義の成熟に取り残された零細事業者の悲しみ、そして日々の質素な生活の単調さをボヤく精一に、一家馴染みの魚の行商・松下さん(渥美清)がかけた言葉です。
ふだん仕事に行き詰まったり追い込まれた時、逃げ出したい、放り投げたい、辞めたいという思念についつい支配されますが、そんな時に、先ずは一旦この言葉を胸に、目の前に仕事があることに感謝し、冷静になりたいものです。
俺にだって一生にいっぺんくらい役作りってやつをさせてください

「蒲田行進曲」より
新作『新選組』映画に沸く撮影所。うだつの上がらない大部屋俳優のヤス(平田満)は、心酔し敬愛するスター俳優・銀ちゃんこと倉岡銀四郎(風間杜夫)のため、そしてその銀ちゃんの身代わりに自分が結婚することになった、彼の子を身ごもる落ち目の女優・小夏(松坂慶子)のために、軽くて半身不随、最悪で死亡という危険きわまりない池田屋階段落ちのシーンで、銀ちゃん演じる土方歳三に斬られ高さ10メートルから転げ落ちる役を、自ら申し出ます。ふだんは役作りをする必要も無い、名も無き雑魚役を演じて日々を過ごす大部屋俳優にとって、この生死のかかった階段落ちは、一日だけスターになれる一世一代のひのき舞台。このセリフは、死の恐怖にさいなまれるヤスが、撮影直前に最後の覚悟をする時間をもらうために、自分以外の全員に向けた魂の願いでした。大部屋俳優でも俳優は俳優。命がけの大仕事を前に、その矜持と尊厳がほとばしる、静かに重厚なセリフです。
無くなウミガメ 明日があんで
明日できることは今日せんでもいいけどな
ボチボチ行け

「岸和田少年愚連隊」より
1975年、大阪・岸和田。中学生のチュンバ(矢部浩之)と小鉄(岡村隆史)は、喧嘩に明け暮れる札付きのワルたち。仲間のサイ(宮迫博之)、アキラ(宮川大輔)らと共に、敵対するアンドウ(吉田敬)、ゴリ(原西孝幸)、ゴリの連れ(藤本敏史)、ゴリの兄(山本太郎)らと、殴る蹴るのみならず、バット、鉄パイプ、石、鉄板など武器は何でもアリの熾烈な抗争を繰り広げていました。
そんなヤクザ顔負けの日々の中、ある夜、瀕死の重傷を負い、ほうほうのていで帰宅したチュンバに、TV番組「野生の王国」のウミガメが泣きながら命がけで産卵する姿を見ながら、オトン(石倉三郎)がかけた言葉。
こてんぱんにやられる時もある。そんな夜はじっと耐えて体を休め、ケガを癒し、気持ちを切り替えて、明日(以降で)やり返せ!
そんな父の激励がこめられたセリフです。やられたらやり返すということ自体の是非はともかく、思うように上手くいかない時も、納得いかない時も、へこたれずに強くたくましく育って欲しい親心がにじみ出ております。そのようにして、昭和の岸和田の少年たちは、大人たちから時に厳しく時に温かく怒られ助けられ、愛され笑われ、タフでハードな日々を過ごし、大人になっていくのでした。
それにしても…井筒和幸監督による、セピア色のノスタルジーと血沸き肉躍る生々しいバイオレンスアクションがあふれる青春グラフィティーの本作、本稿冒頭でも何名か列挙しましたが綺羅星のごとき超豪華キャストです。
燃えるような恋をしろ。大声出してのたうち回るような、恥ずかしくて死んじゃいたいような、恋をするんだよ。
言霊ってあるんだよ!言葉の力ってすごいんだよ!
「愛しちゅうが?」「愛してる。だって俺から女房取ったら何も残らないもん」「ええなあ。そんな風に愛されて」
労働者諸君!田舎のご両親は元気かな。たまには手紙をかけよ。






