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松竹映画に出てくる「いいセリフ」をご紹介します。

毎日続けて仕事があるってのは結構なことだよ

「故郷」より

瀬戸内海の小さな島に住む精一(井川比佐志)、民子(倍賞千恵子)の夫婦は、石船と呼ばれる小さな木造船で石を運び、年老いた父(笠智衆)と二人の子供と生活する糧としていました。大資本家が機械化の進んだ最新の大型船を使い効率よく合理的に作業を遂行するこの時世に、小さな古い石船に執着するのは無駄だと言われ、それを分っていながらも、この生活に深い愛着のある二人でした。
しかし、船のエンジンの不調と高額で見通しのつかない修理、今の石船を諦め工場で働かないかという義弟の勧めなどで、次第にこの故郷を離れる決心を迫られる精一と民子。瀬戸内工業地域の巨大なコンビナート群が、精一の心に重い影を落とします。そして、実際に工場を見学した精一は、重大な決断を迫られることになるのです。
このセリフは、上述したような、いわゆる産業の進化、資本主義の成熟に取り残された零細事業者の悲しみ、そして日々の質素な生活の単調さをボヤく精一に、一家馴染みの魚の行商・松下さん(渥美清)がかけた言葉です。
ふだん仕事に行き詰まったり追い込まれた時、逃げ出したい、放り投げたい、辞めたいという思念についつい支配されますが、そんな時に、先ずは一旦この言葉を胸に、目の前に仕事があることに感謝し、冷静になりたいものです。

その他のちょっと良いセリフ

寂しさなんてのはなぁ、歩いてるうちに風が吹き飛ばしてくれらぁ。

「男はつらいよ 寅次郎の告白(第44作)」より

家出した泉(後藤久美子)と泉を鳥取まで追いかけてきた満男(吉岡秀隆)を見送る時、満男に「おじさんは寂しくなる時はないの?」と聞かれて答えるセリフ。フーテン生活を送る寅さんが寂しさをどうやり過ごしてきたのかを想像させる、深いセリフです。

いつも言ってるでしょ。そういう難しいソクラテスみたいな顔してたら魚は寄ってこないんだって。柔らかく柔らかく待ってないと。

「釣りバカ日誌10(第11作)」より

何と会社を辞めてしまったスーさん。ビル管理会社にシニア社員として働くが、そこで知り合った若者(金子賢)とその恋人(宝生舞)の結婚式のために北九州を訪れ、釣りを楽しむハマちゃんとスーさん。「人間の偉大なる行動力とは?」と哲学的な質問を問いかけるスーさんに、ハマちゃんが返すセリフ。

燭台はこの人が盗んだのではなくわたしが差し上げました

「男はつらいよ 寅次郎恋愛塾(第35作)」より

長崎にて、ツキに見放され商売が全く上手くいかず、宿賃すらも事欠いたテキヤ仲間で悪友のポンシュウが、転売しようと教会に侵入し燭台を盗みます。現場を目撃され、警察のお縄となったポンシュウですが、教会の神父が警察に証言したこの言葉によって釈放されます。その後、心を入れ替え、神父に恩返しすべく教会で働くポンシュウ。
これまで幾度となく映画化されている、かの文豪ヴィクトル・ユーゴーの名作『レ・ミゼラブル』の名エピソードを華麗に引用したこのセリフは、『男はつらいよ』シリーズで一貫して描かれている、市井の人々の「寛容」と「善意」、そして「博愛」を象徴するセリフでもあります。

全ての真実が、国民の安全と幸せにつながるとは限りません。

「ミッドナイトイーグル」より

日本のほぼ半分に壊滅的な打撃を与える特殊時限爆弾を積んだ米軍戦闘機が北アルプス山中に墜落。爆弾を起動させようとテロリストが戦闘機に迫り予断を許さぬ状況の中、政府に国民への真実の開示を強く求める雑誌記者(竹内結子)に対し、対策の指揮を執る内閣総理大臣(藤竜也)が諭すように述べたセリフ。真実というものが孕む二面性の負の側面、それを真実だからという理由で濫用することの危険性、真実の取り扱いには慎重な配慮が必要とされることを、端的に表現したひと言。もしこの場面で日本国民が「真実」を知らされたならば、間違いなく収集不可能な大パニックが起こっていたでしょう。

まぁ あれだな
つらいこともあるんだろうけど 辛抱してやれや
一所懸命辛抱してやってりゃ いいことあるよ

何か困ったことあったら いつでも来いや

「幸福の黄色いハンカチ」より

失恋した花田欣也(武田鉄矢)は会社を辞めた退職金で新車を買い、心の痛手を癒すために北海道へ旅に出ました。道東で訳アリっぽい小川朱美(桃井かおり)という女性と出会った鉄也は、網走刑務所から出所したばかりの島勇作(高倉健)とも知り合い、三人で旅を進めます。
勇作は夕張の炭鉱で働き結婚していましたが、流産をきっかけに妻・光枝(倍賞千恵子)が前夫との間でも流産していた事が発覚、秘密を嫌った勇作は光枝と諍いを起こし、やけになって出かけた夜の歓楽街でチンピラたちに絡まれ、そのうちの一人を殺してしまったのでした。
粛々と受刑の日々が進むなか、まだ若い光枝の将来の再婚と出産のためによかれと獄中で離婚を強行していた勇作ですが、刑期を終える直前に光枝に手紙を送りました。そして、その手紙に勇作が込めたメッセージの結末を確かめに、三人はいちかばちか勇作の妻のもとへ、はるばる夕張へと向かうことに。
道中、ひょんなことから勇作が車を運転することになりますが、そこで運悪く検問に引っ掛かり、服役中に免許が失効している勇作の無免許運転が発覚してしまいます。しかし、勇作が逃げようとも隠そうともせず正直に自白したこと、そして運よく奇遇にも所轄警察署の交通係長・渡辺(渥美清)が、かつて勇作が夕張で殺人事件を犯した時の担当警察官だったことで、無免許運転が軽微な処分で済まされたのです。
このセリフは、そんな勇作との久しぶりの再会を喜んだ渡辺係長の、多くを語らない勇作の性格と、服役中の模範的な囚人生活を推察し、さらには出所後の心境をも慮っての言葉です。まるで同じ渥美清演じる『男はつらいよ』シリーズの寅次郎度々口にしているようなセリフで、ある意味本作ならではの独自性はありませんが、名優・渥美清の、噛んで含めるような口調と表情、行間から溢れる滋味深い人間味も相俟って、じんわりとしっかりと、確実に心に沁みるのです。

本当のことを
知る必要はなかったのかもしれない
って思えてきました

「ある男」より

弁護士の城戸章良(妻夫木聡)は、夫・谷口大祐(窪田正孝)を事故で亡くした谷口里枝(安藤サクラ)から、死んだ夫の身元調査という奇妙な相談を受けます。大祐の死後、彼が大祐ではなく、名前もわからない全くの別人だったことが判明したというのです。里枝や子供たちをはじめ周囲の誰もが大祐だと思っていた“ある男”の正体を追う城戸は、調査を進めるにつれ、別人として生きた男への複雑な思いを抱き始めます。やがて、衝撃の真実が明らかとなります。
このセリフは、亡き夫=”ある男”の正体を知った後での、里枝の言葉です。夫の正体=【真実】がどうあろうと、彼が自分の愛した夫であり、子供たちが慕う父親であったという<事実>は、何ら変わりません。ましてやその【真実】が、里枝たちの人生、過去、記憶、すなわち<事実>を毀損するような、その後の人生に暗い影を落とすような、いわば負の内容だとしたら、そんな【真実】=本当のことなど意味は無い、知る必要は無いとすら言えるのではないでしょうか。
これは<事実>と【真実】の意味や価値について思考を喚起するような、言外の示唆に富む、重みのある言葉です。

どっちの後悔を選ぶかよ。それが人生なんでしょう

「キネマの神様」より

スター女優の園子(北川景子)が、人生の先輩として淑子(永野芽郁)にかけるセリフ。まさに、「人生」とは何かを考えさせられる言葉。

いいか人間誰しも欠点というものがあるんだよ。

「男はつらいよ 幸福の青い鳥(第37作)」より

かつて世話になった旅役者一座の座長の忘れ形見・美保(志穂美悦子)の世話をすることになった寅次郎(渥美清)だが、まるで娘のように美保の将来を案じる気持ちが行き過ぎて、つい妄想に浸る。その妄想の中で、幸福をつかんだ美穂が旦那のことをまじめ過ぎてつまらないと愚痴った際に諭した言葉。世の大多数の人間が救われるであろう言葉。

命を軽んじるのが武士ではありません。
命に感謝し、毎日を懸命に生きよう
それが武士の、いえ、人の在るべき姿です。
人は生きてこそ誰かの役に立てるのです。

「大名倒産」より

家族とお国を守るために、分かっていながらも権力者の命に逆らえず罪を犯したことへの贖罪として自死を選ぼうとした実直な侍を、ぎりぎりのところで踏みとどまらせた小四郎(神木隆之介)のセリフ。
自ら選ぶ死はいかなる理由があれど、余程の特殊な場合を除き、決して本当の意味での贖罪にはなり得ません。それで満足するのは残念ながら死にゆく当人のみです。つまり単なる自己満足なのです。
ならば、その命を絶たず、家族のために、世話や恩や受けた誰かのために使う、それが生を受けた者の使命であり、生きる意味です。
思い詰めた時だけでなく、日々復唱したいほどの金言です。

そりゃ今は悲しいだろうけどさ。月日がたちゃどんどん忘れて行くものなんだよ。忘れるってのは、本当にいい事だな。

「男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎(第27作)」より

幼いころ生き別れになった最愛の弟を、ひょんなことで出会った寅次郎(渥美清)と共に探す芸者の浜田ふみ(松坂慶子)だが、弟は病死していた。悲嘆に暮れながらも、弟の婚約者の、結婚を前に相手を亡くした悲しみを思い遣るふみ。そんなふみに、自分は頭が悪いからすぐに色々な事を忘れると卑下しながらも、寅次郎がかけた、慰めでもあり励ましでもある言葉。忘れるという事は人生の知恵でもある、とも聞こえる。

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