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松竹映画に出てくる「いいセリフ」をご紹介します。

俺にだって一生にいっぺんくらい役作りってやつをさせてください

「蒲田行進曲」より

新作『新選組』映画に沸く撮影所。うだつの上がらない大部屋俳優のヤス(平田満)は、心酔し敬愛するスター俳優・銀ちゃんこと倉岡銀四郎(風間杜夫)のため、そしてその銀ちゃんの身代わりに自分が結婚することになった、彼の子を身ごもる落ち目の女優・小夏(松坂慶子)のために、軽くて半身不随、最悪で死亡という危険きわまりない池田屋階段落ちのシーンで、銀ちゃん演じる土方歳三に斬られ高さ10メートルから転げ落ちる役を、自ら申し出ます。ふだんは役作りをする必要も無い、名も無き雑魚役を演じて日々を過ごす大部屋俳優にとって、この生死のかかった階段落ちは、一日だけスターになれる一世一代のひのき舞台。このセリフは、死の恐怖にさいなまれるヤスが、撮影直前に最後の覚悟をする時間をもらうために、自分以外の全員に向けた魂の願いでした。大部屋俳優でも俳優は俳優。命がけの大仕事を前に、その矜持と尊厳がほとばしる、静かに重厚なセリフです。

その他のちょっと良いセリフ

お前もいずれ、恋をするんだなぁ。あぁ、可哀想に。

「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋(第29作)」より

丹後から帰ってきた寅次郎は、珍しく憔悴し寝込んでいた。というのも、旅先で出会った、美しい未亡人かがり(いしだあゆみ)に恋し惚れ込んでしまっていたからだ。なおかつ、なんと今回はかがりの側も寅次郎に思いを寄せていた…。そんな稀にみる事態に憔悴し寝込んでいた寅次郎が、気づいたら少年に育っていた妹さくら(倍賞千恵子)の息子・満男(吉岡秀隆)に向けた言葉。一方的なものばかりとはいえ、恋というものに内在する悲喜交々の、特に悲しみ、すなわち失恋を何度も味わってきた寅次郎だからこその、これから青年となる満男の将来をを案じたつぶやき。

本当のことを
知る必要はなかったのかもしれない
って思えてきました

「ある男」より

弁護士の城戸章良(妻夫木聡)は、夫・谷口大祐(窪田正孝)を事故で亡くした谷口里枝(安藤サクラ)から、死んだ夫の身元調査という奇妙な相談を受けます。大祐の死後、彼が大祐ではなく、名前もわからない全くの別人だったことが判明したというのです。里枝や子供たちをはじめ周囲の誰もが大祐だと思っていた“ある男”の正体を追う城戸は、調査を進めるにつれ、別人として生きた男への複雑な思いを抱き始めます。やがて、衝撃の真実が明らかとなります。
このセリフは、亡き夫=”ある男”の正体を知った後での、里枝の言葉です。夫の正体=【真実】がどうあろうと、彼が自分の愛した夫であり、子供たちが慕う父親であったという<事実>は、何ら変わりません。ましてやその【真実】が、里枝たちの人生、過去、記憶、すなわち<事実>を毀損するような、その後の人生に暗い影を落とすような、いわば負の内容だとしたら、そんな【真実】=本当のことなど意味は無い、知る必要は無いとすら言えるのではないでしょうか。
これは<事実>と【真実】の意味や価値について思考を喚起するような、言外の示唆に富む、重みのある言葉です。

どんな死にも必ず意味があります。

「オクス駅お化け」より

頭も心も身体も日々それなりに忙しく生きる中、人は、自分の人生とは関係のない、無縁な人物、すなわち他人の死を、ややもすれば単なるいち事象としてドライに受け取ってしまうきらいがあります。
しかし、どんな人でも人生(歴史)があり、家族や友人・知人、愛する人・愛してくれる人がいて、死そのものは不運による場合も多々ありますが、自ら死を選んだ人には必ずそうするに至った理由があるのです。
他人の死に際し、いちいちその背景に思いを馳せる必要は無いとは思いますが、少なくともその人が生きていたという事には、ささやまな敬意を持ちたいものです。

言霊ってあるんだよ!言葉の力ってすごいんだよ!

「一度死んでみた」より

「死んでくれくそおやじ!」と常に毒づいていた父の死に戸惑う七瀬(広瀬すず)に松岡(吉沢亮)がかけた言葉。日頃何気なく使ってしまっている言葉ってあるかな?と思い返して思わずハッとしたセリフ。

全ての真実が、国民の安全と幸せにつながるとは限りません。

「ミッドナイトイーグル」より

日本のほぼ半分に壊滅的な打撃を与える特殊時限爆弾を積んだ米軍戦闘機が北アルプス山中に墜落。爆弾を起動させようとテロリストが戦闘機に迫り予断を許さぬ状況の中、政府に国民への真実の開示を強く求める雑誌記者(竹内結子)に対し、対策の指揮を執る内閣総理大臣(藤竜也)が諭すように述べたセリフ。真実というものが孕む二面性の負の側面、それを真実だからという理由で濫用することの危険性、真実の取り扱いには慎重な配慮が必要とされることを、端的に表現したひと言。もしこの場面で日本国民が「真実」を知らされたならば、間違いなく収集不可能な大パニックが起こっていたでしょう。

責任や。『普通』っていうのは、そういうもんやろ?

「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」より

「普通」に生きることを命じられた、伝説の殺し屋ファブル(岡田准一)。かつて救えなかった少女を救うことを、ヨウコ(木村文乃)に止められたときに出たセリフ。

燭台はこの人が盗んだのではなくわたしが差し上げました

「男はつらいよ 寅次郎恋愛塾(第35作)」より

長崎にて、ツキに見放され商売が全く上手くいかず、宿賃すらも事欠いたテキヤ仲間で悪友のポンシュウが、転売しようと教会に侵入し燭台を盗みます。現場を目撃され、警察のお縄となったポンシュウですが、教会の神父が警察に証言したこの言葉によって釈放されます。その後、心を入れ替え、神父に恩返しすべく教会で働くポンシュウ。
これまで幾度となく映画化されている、かの文豪ヴィクトル・ユーゴーの名作『レ・ミゼラブル』の名エピソードを華麗に引用したこのセリフは、『男はつらいよ』シリーズで一貫して描かれている、市井の人々の「寛容」と「善意」、そして「博愛」を象徴するセリフでもあります。

先生からは1点だけ、幸せになってください

「ウェディング・ハイ」より

結婚式で新婦の恩師(片桐はいり)が、新婦(関水渚)へ贈る言葉。心を込めた一言に、新婦の頬にも思わず涙が。

調べるのやめました

「八つ墓村」より

複雑怪奇かつ難解な連続猟奇殺人事件の謎を解き、見事に解決した金田一耕助(渥美清)による、事件解決後の飄々としつつも諦念めいた意味深な発言。誰の為にもならない、誰の得にもならない、むしろ害悪にしかならないような真実は、調べる必要があるのか?いや、無い。調べたら調べたで、それを隠さなければならない、そのような真実に価値はあるのか?いや、無い。まるでそんな問答がひとしきり込められたような、短いながらも含蓄豊かなセリフです。探偵にとっては職務放棄、依頼者への背信行為とも言える、敢えて調査を止めるという選択。そこに金田一耕助を名探偵たらしめている優しさと聡明さを感じずにはいられません。

命というものがたった一つでないのなら…我々はなんのために必死になって生きているのですか

「CASSHERN」より

終始描かれるおぞましい光景の中で、切実に命の尊さを訴えかける場面。重みと気迫に圧倒される…!

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