その他のちょっと良いセリフ
考えたらダメっす。
取り込まれますよ。

「ミンナのウタ」より
居る(在る)はずのないモノ、すなわち見てはいけないモノを見てしまった関口と中務。当然恐れおののき狼狽する関口に対して、冷静な中務が諭した言葉です。
想定できない、想像を超えた(外れた)事象に直面すると、人は往々にしてその事そのものや原因・理由、真偽などを考えてしまい、不安や恐怖に支配され、思考も行動も不自由になってしまいます。まさに事象に「取り込まれ」るのです。
しかし、それを避けるための、自由でいるための知恵、それが「考えない」ことなのです。これは人生の様々な局面で有効な、普遍性・汎用性の高い知恵かもしれません。
さて、ここで見事な冷静さを見せた中務ですが、果たして彼らはその先で待ち受ける恐るべき異常な怪異事象の数々を、「考えない」ことで「取り込まれ」ずにいられるのでしょうか・・・
お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか?
「愛しちゅうが?」「愛してる。だって俺から女房取ったら何も残らないもん」「ええなあ。そんな風に愛されて」
ああ、この人を幸せにしたいなぁと思う。この人のためだったら命なんかいらない、もう俺死んじゃってもいい、そう思う。それが愛ってもんじゃないかい?
行かなくては。
止まっちゃいけない。

「夜の片鱗」より
昼は工場、夜はバーで働く19歳の芳江(桑野みゆき)は、駆け出しのヤクザ組織の下っ端・英次(平幹二郎)の情婦となった。惚れた弱みか、組織への上納金の無心など英次の頼みを断れない芳江。一方でうだつの上がらない日々を送る英次は組織での出世も叶わず、単なる芳江のヒモに成り下がっていた。やがて英次の鬼畜っぷりはエスカレートし、遂には芳江に売春を強要するようになった。さすがに気持ちも肉体も悲鳴を上げ耐えきれなくなる芳江。しかし、英次がどうしようもない男と知りつつ離れることのできない複雑な心理に揺れ動き翻弄され、結局逃げだすことができない。そんなただひたすらに堕ちていく日々の中、建築技師の藤井(園井啓介)と出会う。芳江に惚れた藤井は、なんとかして芳江を救い出し、自分の転勤先に連れて行き、結婚して幸せに導こうとするが…。
このセリフは、そんな藤井の求愛に応えたい、すなわち英次との地獄のような日々から脱出したい気持ちを必死に自分に言い聞かせる芳江の心の叫びです。しかし、英次により消えない焼き印を刻まれたかのような芳江は、まるで薬物中毒からの脱却さながらに苦悶するのです。また、英次との関係は救われようの無い共依存の域に達していたとも見ることができます。良くも悪くも、男女の関係は簡単には断ち切れない、理屈では説明できないような抗い難い引力により否応なく結び付けられ、人はそれを時に優しく「腐れ縁」と言ったり、時に厳しく辛辣に「呪縛」と突き放したりします。とにかく、強く結びついてしまった悪しき関係の切断には、このセリフのような強い気持ちが、最低限必要なのです。
成功すれば もちろんいい
しかし失敗して赤字を出したとしても
やらねえよりマシだと 俺は思うな
何て言ったらいいか
赤字をおっかながってやらないのは
それでもう失敗なんだ
だから失敗をおっかながってやらねえより
やって失敗したほうが 俺はいいな

「同胞」より
岩手県にある過疎に苦しむ農村の青年会会長・清水高志(寺尾聡)を、東京の劇団スタッフ河野秀子(倍賞千恵子)が訪ねて来ました。村でのミュージカル公演を青年会に主催して欲しいという劇団側、その要望に応えて公演主催を実現したい高志ほか青年会の中心メンバーたち。しかし、主催するということは赤字だった場合のリスクを背負うことを意味し、反対意見が大多数でした。高志の熱意によって賛同者は徐々に増えていたとはいえ、青年会全体の意見は割れている状態で、最終結論を出す総会を迎えます。
このセリフは、総会での議論が紛糾する中で、結論が出ずに暗礁に乗り上げかけた際に、とある青年会のメンバーが発言したものです。
素朴で親しみやすい中に、芯の強い、腰の入った勇気と覚悟、そして力強さがこもった、とても普遍性がある言葉です。仕事、スポーツ、受験などなど、組織や個人の別を問わず、ジャンルも問わず、すべての挑戦者の胸に宿り息づいて欲しい考えです。筆者も本作を鑑賞し、このセリフに出会い、襟を正した次第です。
この発言をきっかけに、議論の風向きは代わり、ついに公演主催が決定します。そして、幾度となく中止の瀬戸際にたちながら、団結した若い力はとうとう公演当日を迎えます。果たしてその結末は…?
思ってるだけで何もしないんじゃな、愛してないのと同じなんだよ。
幸せは希望の向こう側にある。

「大怪獣のあとしまつ」より
人類を未曽有の恐怖に陥れた大怪獣が、ある日突然、死にました。国民は歓喜に沸き、政府は怪獣の死体に「希望」と名付け、国全体が安堵に浸ったのです。しかし、安堵も束の間、この巨大怪獣の死体が腐敗による体温上昇で徐々に膨張が進み、ガス爆発の危機が迫っていることが発覚します。大怪獣の死体が爆発し、漏れ出したガスによって周囲が汚染される事態になれば国民は混乱し、国家崩壊にもつながりかねません。そこで、絶望的な時間との闘いの中、国民の運命を懸けて死体処理という極秘ミッションを任されたのは首相直轄組織・特務隊の隊員である帯刀アラタ(山田涼介)でした。このセリフは、ほとんどインポッシブルなミッションに挑むアラタの、諦めない気持ちの力強い表明です。また、先般大怪獣が「希望」ネーミングされた事にも引っかけた、ウィットとユーモアの効いたナイス発言とも言えるでしょう。いかなる無理難題を前にし、どんなに過酷な難局にあっても、このような強い気持ちと余裕を持っていたいものです。
お前、さしずめインテリだな?それじゃ余計女にモテないよ。ダメだ、あきらめな。

「男はつらいよ 翔んでる寅次郎(第23作)」より
行商先の北海道・支笏湖畔で、男(湯原昌幸)に襲われかけたひとみ(桃井かおり)を救った寅次郎(渥美清)。ひとみは田園調布の富豪令嬢で、結婚を間近かに控えていたがマリッジブルーからの現実逃避で北海道を旅していた。帰京後まもなく、結婚式を逃げ出し柴又へ寅次郎に会いに来たひとみは、とらやで暮らし始め、寅次郎との距離が縮まる。しかしそこへひとみと結婚するはずだった邦男(布施明)が度々訪れるようになり、ひとみへの執着を見せる。失恋豊富な寅次郎は邦男を慰めるが、難解な御託を並べる邦男に対して、ひとみを諦めるよう言い放った言葉。辛辣な放言に聞こえるかもしれないが、寅次郎は、容姿端麗な見た目や家柄だけではなく、意外に純朴で真っ直ぐな邦男という男の天性の魅力を理解しており、そのうえで男らしい潔さを身につけるよう示唆する、温かい言葉です。





