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ちょっと懐かしい!90年代の邦画(日本映画)松竹作品15選

2023.12.27

90年代映画(邦画)

はじめに

1990年代の邦画には、タイトルは聞いたことがあるけれど実は見逃していた!という作品も多いかもしれません。名監督が残した作品には今見ても新鮮な発見があり、現在も活躍する俳優たちの若き日の活躍を見る楽しさも。時代のムードを反映した1990年代の作品の中から、松竹作品おすすめの15本を厳選して紹介します。

1990年代の日本映画界の状況と邦画作品の特徴は?

空前の好景気だったバブル経済の崩壊の足音が聞こえてきたのは、1991年のこと。人々が惜しげもなく消費活動をしていた華やかな時代は終わりを告げ、銀行や証券会社、不動産会社が続々と倒産。

リストラという言葉が一般化されたのもこの頃で、次第に雇用不安も広がっていきました。日本全体が不況に陥るなか、1990年代半ばからは家庭用のパソコンや携帯電話が普及期を迎え、個人でのインターネット利用が増加していきます。

映画の興行成績に目を向けると、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『ダイ・ハード』の続編などハリウッド映画が次々にヒットを記録。大作の勢いに押され、1980年代から続いている“洋高邦低”の状況に大きな変化はありませんでした。

しかし漫画やアニメ、ゲームなど複数の媒体を組み合わせるメディアミックスの動きが活気づき、2000年代に向けて邦画が返り咲く明るい兆しも。ビデオ市場の拡大によって才能あふれる作り手のチャンスが増え、多様性を感じる作品が芽吹いていた時期でもあります。

松竹担当者が選ぶ1990年代の邦画(日本映画)15選

現代と地続きとも言えるテーマを内包しながらも、劇中で描かれる街の風景や物語はちょっとだけレトロで懐かしい。絶妙に心をくすぐる1990年代の作品のなかから、松竹担当者が15本を選びました。

1. 八月の狂詩曲(ラプソディー)(1991年)

八月の狂詩曲(ラプソディー)

長崎の田舎で暮らす祖母・鉦のもとで夏休みを過ごすことになった、4人の孫たち。被爆体験を持つ祖母と時間をともにするうちに、戦争が遺したものを知っていく。

1980年代にも『影武者』『乱』などの名作を撮った黒澤明が、村田喜代子の芥川賞受賞小説「鍋の中」を映画化。リチャード・ギアが鉦の甥であるクラークを演じて、反戦のメッセージを体現した。

戦争を題材にした作品は今でも作られ続けているが、この映画が公開された1991年にはまだ証言者の存在が近しいものだったと言えるかもしれない。ひっくり返った傘を持ち、激しい雨風のなかを歩いていく老婆の姿とシューベルトの「野ばら」の合唱が重なるシーンの、なんという凄み。

おばあちゃんと一緒に縁側で語らうようなのどかな時間を描きながらも、キノコ雲のごとき雨雲が現れる終盤の展開に黒澤明のヒューマニズムが宿る。

作品情報

公開(年):1991年

ジャンル :人間ドラマ

監督   :黒澤明

キャスト :村瀬幸子、リチャード・ギア、吉岡秀隆、大寶智子、伊崎充則

上映時間 :98分

2. 息子(1991年)

岩手で暮らす老いた父親と、東京でフリーターとして生活している息子。ときにはぶつかり合いながらも、互いを思いやる親子の関係を見つめる。

毎年『男はつらいよ』を撮っていた山田洋次監督が、椎名誠の「倉庫作業員」を映画化。親子のずれを描く構成は小津安二郎の『東京物語』を思わせ、バブル華やかなりし頃の日本に確かにあった市井の人たちの暮らしを温かく切り取った。

息子と聴覚障害をもつ女性との恋模様、そして報告を受けた父親が夜中に「お富さん」を歌うシーンでは胸いっぱいに多幸感が広がる。日本アカデミー賞最優秀作品賞など、この年の映画賞を総なめした。

作品情報

公開(年):1991年

ジャンル :人間ドラマ

監督   :山田洋次

キャスト :三國連太郎、永瀬正敏、和久井映見、原田美枝子

上映時間 :121分

3. つぐみ(1990年)

生まれつき体が弱く、わがままに育った18歳のつぐみ。東京で大学生活を送る従姉妹のまりあはつぐみと彼女の姉に招かれ、高校まで過ごした西伊豆で夏を過ごすことになる。

1980年代の終わりに社会現象となった吉本ばななの同名ベストセラー小説を、刊行の翌年に市川準監督が映画化。この映画を見て、ロケ地である西伊豆の松崎を訪れたという人も多いかもしれない。

少女たちが過ごすひと夏を、恋のときめきや別れ、死の香り、海の匂いとともに真空パックしたような作品に仕上がっている。乱暴な口をきき、豊かな感受性を持つつぐみを演じた牧瀬里穂がとんでもなく愛らしい。

作品情報

公開(年):1990年

ジャンル :人間ドラマ

監督   :市川準

キャスト :牧瀬里穂、中嶋朋子、白島靖代、真田広之

上映時間 :105分

4. われに撃つ用意あり(1990年)

われに撃つ用意あり

歌舞伎町。店じまいを控えたスナックのマスター、克彦は警察とやくざに追われている中国系タイ人の女性をかくまう。それをきっかけに、かつて学生運動にすべてを捧げていた克彦と仲間たちの魂が燃え上がっていく。

1990年の作品だが、全共闘世代の哀しみを背負いつつもムンムンに色気を放つ原田芳雄と桃井かおりのコンビには、1970年代の香りが。ストップモーションで切り取られる、ハードボイルドなふたりの表情に惹きつけられる。

そしてもうひとりの主人公は、不夜城たる新宿の街そのものだろう。今ではすっかり様変わりしたが、1990年代当時のコマ劇場の景色を見ると、あの場所には今も昔も語りたくなるストーリーがあるのだと感じさせられる。

作品情報

公開(年):1990年

ジャンル :人間ドラマ

監督   :若松孝二

キャスト :原田芳雄、桃井かおり、ルー・シュウリン、蟹江敬三

上映時間 :106分

5. 遠き落日(1992年)

遠き落日

福島県の貧しい農家に生まれ、細菌学の権威となった野口英世。幼い頃に左手に大火傷を負いながらも功績を残した彼の生涯を、『ハチ公物語』などで知られる神山征二郎監督が描いた。

決して学ぶことを諦めなかった不屈の努力のみならず、友人に金の無心をして酒に溺れる人間くさい面もすくい取られている。

この映画の背骨になっているのは、三田佳子が若き日から亡くなるまでを演じた、母のシカの存在だろう。自分の不注意のせいで息子に怪我をさせたと思うシカは、生涯、無償の愛を注ぎ続ける。

読み書きができなかった母が、異国へと渡ったままの息子に「はやくきてくだされ」と手紙を綴るシーンの感動は時を超え、涙なしには観られない。

作品情報

公開(年):1992年

ジャンル :伝記ドラマ

監督   :神山征二郎

キャスト :三田佳子、三上博史、仲代達矢、牧瀬里穂

上映時間 :119分

6. 学校(1993年)

都電が走る下町。西田敏行演じる夜間中学の教師と、様々な事情を抱えた生徒たちとの交流を描く。山田洋次監督が15年間も温め、実話も織り交ぜながら完成させたという人間ドラマの名作。

在日朝鮮人のオモニ、文字の読み書きを学ぶ中年男、不登校だった女性、日本に馴染めない中国人。監督は1990年代にすでに、多様性のある世界に目を向けている。

ときには衝突しながらも本音を語る彼らを見ていると、まるで自分自身も狭い教室の片隅に座っているかのような感覚に。終盤に描かれる、幸福とは何か?という人生についての授業も忘れがたい。

作品情報

公開(年):1993年

ジャンル :人間ドラマ

監督   :山田洋次

キャスト :西田敏行、竹下景子、萩原聖人、中江有里、裕木奈江、田中邦衛

上映時間 :128分

7. 女ざかり(1994年)

主人公は、念願の論説委員になった新聞記者の弓子。しかし初めて書いた社説が宗教団体の怒りを買い、左遷されてしまう。

多くの少年少女の映画を撮ってきた大林宣彦監督が吉永小百合を主演に迎え、丸谷才一のベストセラー小説を映画化。スーパー16ミリカメラを使い、おびただしいカット数で報道と政治の世界、男と女の関係を実験的に描き出した。

吉永小百合と、津川雅彦をはじめとする濃厚な俳優陣とのケミストリーも見応え十分。今や一つのジャンルでもある“吉永小百合映画”だが、1994年当時の硬質な色香を放つ彼女の存在感を切り取ったこの主演作は、野心作と言っていい。「女ざかりって通り過ぎてから気がつくみたい」と娘につぶやくシーンの横顔があまりにも美しい。

作品情報

公開(年):1994年

ジャンル :人間ドラマ

監督   :大林宣彦

キャスト :吉永小百合、三國連太郎、津川雅彦、藤谷美紀

上映時間 :118分

8. 忠臣蔵外伝 四谷怪談(1994年)

忠臣蔵外伝 四谷怪談

日本人の義侠心をくすぐり続けてきた「忠臣蔵」と夏の夜に涼しさを運んできた「四谷怪談」。ふたつを組み合わせ、元赤穂藩侍の民谷伊右衛門とお岩の恋愛、四十七士の討ち入りを描く。

血みどろの描写、霊のパワー、琵琶の音色とカルミナ・ブラーナ、ホラーとラブストーリー、すべてが渾然一体となった世界はすべてが過剰でエネルギッシュ。

まさに体当たりでお岩を演じた高岡早紀をはじめ、狂乱の舞を見せた荻野目慶子、白塗りの渡辺えり(当時は「渡辺えり子」)ら女優陣の存在感にも圧倒される。

1970年代には『仁義なき戦い』シリーズなどの代表作を残し、1990年代になっても変わらぬ爆発力と何でもありの深作欣二監督ワールドが堪能できる異色の時代劇だ。

作品情報

公開(年):1994年

ジャンル :時代劇

監督   :深作欣二

キャスト :佐藤浩市、高岡早紀、荻野目慶子、津川雅彦

上映時間 :106分

9. 鬼平犯科帳 劇場版(1995年)

鬼平犯科帳 劇場版

鬼平の異名を持つ火付盗賊改方長官、長谷川平蔵の前に、罪なき人たちを惨殺して火をつけ、狐火と名乗る極悪非道な盗賊が現れる——。幅広い世代に愛され続けている池波正太郎の時代小説を、テレビシリーズでもお馴染みの二代目中村吉右衛門と小野田嘉幹のタッグで映画化。

「狐火」をベースにストーリーが構成され、岩下志麻、藤田まことをはじめとする劇場版ならではの華やかな共演も楽しめる。新作時代劇の製作が減り続けている今、美術のディテールや殺陣の様式美などすべてにおいてどっしりとした風格を感じられる1本。

作品情報

公開(年):1995年

ジャンル :時代劇

監督   :小野田嘉幹

キャスト :二代目中村吉右衛門、岩下志麻、梶芽衣子、藤田まこと

上映時間 :105分

10. GONIN(1995年)

ディスコのオーナー、刑務所帰りの美青年、パンチドランカーの元ボクサー、リストラされたサラリーマン、元刑事。社会から振るい落とされてしまった5人は、暴力団の事務所から大金を強奪することに成功。

しかし暴力団による報復が始まる。竹中直人が石井隆監督に『レザボア・ドッグス』のような作品を撮ってみたら?と提案したことから動き出した作品だけに、男だらけの過剰な暴力が描かれる。

ビートたけし演じるヒットマンの主犯格が登場するシーンに漂うのは異様な緊迫感。バブル崩壊によって人生を変えられた5人の物語は、1990年代中盤の虚しさや不満から生まれたものかもしれない。男たちの生き様ではなく死に様にしびれるバイオレンスアクションだ。

作品情報

公開(年):1995年

ジャンル :バイオレンス

監督   :石井隆

キャスト :佐藤浩市、本木雅弘、根津甚八、竹中直人、ビートたけし

上映時間 :109分

11. 岸和田少年愚連隊(1996年)

岸和田少年愚連隊

1975年、大阪、岸和田。中場利一の自伝的小説をもとに、ケンカばかりしている男子たちの青春を描く。監督は1981年に島田紳助主演の『ガキ帝国』を手がけた井筒和幸。

主人公のチュンバと小鉄にナインティナインの矢部浩之と岡村隆史を抜擢し、コテコテの大阪弁の掛け合いで笑いを生み出している。仲間のことを思って無敵のカオルちゃん(小林稔侍が怪演。のちのシリーズでは竹内力のハマり役に)に立ち向かうものの、もちろんぶっ飛ばされるやべっちが妙にかっこいい。

1970年代のヒット曲が流れる、コミカルでノスタルジックなヤンキー映画。『ビー・バップ・ハイスクール』などが生まれた1980年代に比べるとヤンキー映画の勢いがなかった1990年代だが、見逃し厳禁の傑作となっている。

作品情報

公開(年):1996年

ジャンル :青春映画

監督   :井筒和幸

キャスト :矢部浩之、岡村隆史、大河内奈々子、秋野暢子

上映時間 :106分

12. 虹をつかむ男(1996年)

お客さんを満足させたい一心で傾きかけた映画館を営むオデオン座の館主と、就職試験に失敗して東京、柴又からやってきた青年。ふたりの関係を軸に、徳島の小さな町の人間模様を描く。

渥美清の急逝により、『男はつらいよ』シリーズに代わってお正月映画として公開された人情喜劇。映写室の様子も映し出され、劇中でも上映される『ニュー・シネマ・パラダイス』の日本版のような趣がある。

数々の映画が贅沢に引用され、終盤には寅さんへのストレートなオマージュも。山田洋次監督の尽きることない映画愛が、たっぷりと詰まっている。

作品情報

公開(年):1996年

ジャンル :人間ドラマ

監督   :山田洋次

キャスト :西田敏行、吉岡秀隆、田中裕子、田中邦衛、倍賞千恵子、前田吟

上映時間 :120分

13. あ、春(1998年)

良家の娘と結婚して息子にも恵まれた、証券会社のエリートサラリーマン。彼の前に幼い頃に死別したと聞かされていた父親が現れたことで、騒動が巻き起こる。

破天荒なのにどこか憎めないつむじ風のような父親が温めるひよこは、生まれるのかそれとも……?家族の形が変わりゆき、家族のあり方がひとつではなくなった1990年代の家、親子、血のつながりと命の営みをユーモアとともに描き出すホームドラマ。

スクリーンの中で数々の女優を輝かせてきた相米慎二監督らしく、義父と心を通わせる斉藤由貴をはじめ、藤村志保、富司純子の存在感がこの物語をさらに奥行きのあるものにしている。

作品情報

公開(年):1998年

ジャンル :人間ドラマ

監督   :相米慎二

キャスト :佐藤浩市、山﨑努、斉藤由貴、藤村志保、富司純子

上映時間 :100分

14. お受験(1999年)

食品会社の陸上部に所属する実業団ランナーの夫と、娘の小学校受験に燃える専業主婦の妻。夫がリストラされて家事を担うことになり、妻が外で働き始めた一家の“お受験”の行方は!?

ドラマ「アリよさらば」で高校教師を演じた矢沢永吉が主演を務めたコミカルなホームドラマ。掃除や料理に精を出すちょっぴり切ない父親であり、走ることを愛するランナーを意外なほどナチュラルに演じている。

現実味のない最後の父親の“選択”は、矢沢から中年たちへのエールなのかもしれない。監督はのちに『おくりびと』で米アカデミー賞外国語映画賞を受賞する滝田洋二郎。今では当たり前になった“お受験”の1990年代の事情を垣間見る楽しさもある。

作品情報

公開(年):1999年

ジャンル :ホームドラマ

監督   :滝田洋二郎

キャスト :矢沢永吉、田中裕子、西村雅彦、大平奈津美

上映時間 :114分

15. 御法度(1999年)

大島渚監督が『戦場のメリークリスマス』と同じく主演・ビートたけし、音楽・坂本龍一と組んだ時代劇。新撰組に美しい少年が入隊したことで組織の秩序が乱れていく様を描く。

新撰組における衆道という定番の題材を彩るのは、生と死の狭間のごとき幻想的で耽美的な映像。本作で鮮烈なデビューを果たした松田龍平が涼やかなまなざしで強面な大人たちを翻弄する惣三郎を演じ、これ以上ないハマり役となった。

おなじみのダンダラ羽織とは一線を画すワダエミの衣装も男たちの個性を際立たせている。現代では同性愛がドラマ、映画の定番の題材となっているが、1990年代という時代においては、大島渚監督がある種のタブーに挑んだとも言える。

作品情報

公開(年):1999年

ジャンル :時代劇

監督   :大島渚

キャスト :ビートたけし、松田龍平、武田真治、浅野忠信、崔洋一

上映時間 :100分

まとめ

心が温かくなる人間ドラマから、新しい家族像を描いたホームドラマ。ノスタルジックな青春映画やバイオレンスアクションなど、多様な作品が誕生した1990年代の邦画界。監督、俳優、ジャンルなど気になるポイントがあったらチェックして、ぜひお気に入りの1本を見つけてみてください。

松竹の邦画名作品は別の記事でも紹介しています。こちらもぜひご覧ください。

この記事を書いた人

細谷美香

情報誌の編集を経て、ライターに。新聞や雑誌を中心に映画紹介やインタビューを担当。着物を着るのが趣味なので、日本映画のなかの着こなしを見るのも大きな楽しみのひとつです。

※おすすめ作品は松竹の担当者が選びました。

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