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ストレス発散!笑えるコメディ邦画(日本映画)松竹作品15選
2023.10.31
はじめに
俗に“笑う門には福来たる”と言われていますが、笑顔になれる局面が多い方が精神衛生上、良いのは疑いの余地のないところ。映画でも、笑えるものを見たいと思う人は少なくないでしょう。邦画の世界でも優れたコメディはこれまで多数作られており、観客を大いに楽しませてきました。そんな名作の数々を、たっぷり紹介。気持ちよく笑って、ココロの洗濯をしてみてはいかがでしょうか?
松竹ではおうちで楽しめるDVDを販売しています。公式サイトからぜひチェックしてみてください。
洋画と邦画(日本映画)で微妙に異なるコメディ映画
映画業界では、しばしば言われることですが、“洋画のコメディは日本では当たらない”という通説があります。これはギャグの質が国によって異なるから。実際、アメリカンジョークは日本では理解されにくいという現実もあります。生活環境が異なれば、そこに生じるユーモアも異なってくるのは当然といえば当然でしょう。具体的に洋画と邦画では、コメディの質はどう異なるのか?
ざっくりとではありますが、解説してみましょう。
洋画のコメディの特徴
基本的に洋画のコメディはジョークが多く、英語のわかる人なら耳で聞いて瞬時に笑えるでしょう。しかし、字幕や日本語訳を作る人には頭の悩ませどころ。ツッコミがなく、ボケのみのスタイルは日本人には少々わかりづらいかもしれません。また、ジョークにはウィット(※1)がこめられていたり、時事ネタや政治風刺が盛り込まれていたりするのも、洋画のコメディの特徴です。洋画のコメディにはさまざまなスタイルがあり、一概にはできませんが、このような特色が上げられるでしょう。
※1:気のきいた会話や文章などを生み出す才知。機知。とんち。(出典:gooトップ|witの解説)
邦画のコメディの特徴
邦画のコメディは主に、面白いことがおこるであろう設定を重視しています。この場所に、このキャラクターたちを置いたらどうなるか?そんな化学反応を踏まえて、ドラマを展開させる作品が多く見られます。ジョークは基本的にボケとツッコミで成立し、ふたり以上の会話により笑いが成立する場合が多いと言えるでしょう。また、情や性格といった人間性を基にして、ドラマを転がしていくのも邦画コメディの特色です。
泣いて、笑って、恐怖して…。ジャンル別にまとめた松竹おすすめ映画はこちらから確認できます。気になる方はぜひご覧ください。
松竹担当者が選ぶ邦画(日本映画)コメディ15選
100年を超える歴史を持つ松竹では、これまで多くの作品を世に送り出してきましたが、とりわけ喜劇には定評があり、『男はつらいよ』シリーズをはじめとするコメディが観客の支持を受けてきました。小市民のおかしみや悲哀を描き、共感を引き寄せつつ笑わせる、そんな喜劇が粒ぞろい。
ぜひ一度、触れてみてください!
1. 釣りバカ日誌(1988年)
1979年から連載されている長寿コミックを映画化し、『男はつらいよ』に次ぐ松竹の人気喜劇シリーズに発展したヒット作。万年ヒラ社員のハマちゃんと、社長のスーさん。釣りが大好きという共通点で結ばれた、そんな彼らの出会いと友情を、ドタバタ騒動とともに描く。同じ会社に所属しながら、釣り仲間であることを大っぴらにしないふたりの“秘密の関係”や、ハマちゃんと愛妻の熱愛ぶりが笑いを誘う。西田敏行と三國連太郎の丁々発止はシリーズを追うほどノリノリに。
作品情報
公開(年):1988年
ジャンル :コメディ、喜劇
監督 :栗山富夫 他
キャスト :西田敏行、三國連太郎、石田えり、山瀬まみ
上映時間 :93分
『釣りバカ日誌』については公式サイトがありますのでそちらもぜひ見てみてください。
2. ウェディング・ハイ(2022年)
芸人、タレントとして活躍するお笑い界の鬼才、バカリズムのオリジナル脚本を映画化。
主人公、中越は敏腕ウェディングプランナー。しかし、この日の結婚式はプランどおりには行かなかった。挨拶や乾杯の音頭に並々ならぬ情熱を注ぐ主賓たち。そして花嫁の元カレまでもが乱入して……。老若男女が集う結婚式場の人間模様を徹底的にデフォルメ。混乱の中、状況の悪化に振り回される真帆のコミカルな奮闘から目が離せない!
作品情報
公開(年):2022年
ジャンル :コメディ
監督 :大九明子
キャスト :篠原涼子、中村倫也、向井理、高橋克実
上映時間 :117分
3. 一度死んでみた(2020年)
主人公はデスメタルバンドでボーカルを務め、大嫌いな父に向けて“一度死んでくれ!”とシャウトする女子大生。そんなある日、製薬会社の社長である父が本当に死んでしまった!実はこれ、会社乗っ取りの陰謀に直面した父が、“2日だけ死んじゃう薬”を使って仮死した偽装策。しかし、父が本当に火葬されそうになり、ヒロインは父を救うべく奮闘する! 髪をピンクに染めた広瀬すずがノリノリでコメディエンヌを務める快作。
作品情報
公開(年):2020年
ジャンル :コメディ
監督 :浜崎慎治
キャスト :広瀬すず、吉沢亮、堤真一、妻夫木聡
上映時間 :93分
4. 僕らはみんな生きている(1993年)
『おくりびと』の滝田洋二郎監督が風刺をこめて描いたコメディ。
東南アジアの軍事政権国を商用で訪れていた日本人会社員たちがクーデターに直面。争乱の下、なんとか帰国しようと、彼らはジャングルを抜けて飛行場を目指すが、反政府ゲリラと遭遇してしまい……。平和な日本に慣れたビジネスマンたちが、戦火を名刺一枚で切り抜けようとする悪戦苦闘ぶりがおかしい。ヤケクソ気味に軍人たちを説得する主人公にふんした真田広之の妙演も見もの。
作品情報
公開(年):1993年
ジャンル :コメディ
監督 :滝田洋二郎
キャスト :真田広之、山﨑努、岸部一徳、嶋田久作
上映時間 : 115分
5. 家族はつらいよ(2016年)
『男はつらいよ』の名匠、山田洋次監督による家族ドラマ。
定年退職して悠々自適の生活をおくる男が、妻に離婚届を出されて大慌て。子どもたち夫婦も集まって緊急家族会議が開かれ、そこで発覚する意外な事実が、さらに問題を広げていき……。カッとなったりグチったり、そんな家族間のやりとりを見つめつつ、会話の間でクスリとさせる絶妙の演出。ハートウォーミングな味わいも魅力となっている。続編『家族はつらいよ2』、『妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ』ともども、お見逃しなく。
作品情報
公開(年):2016年
ジャンル :コメディ
監督 :山田洋次
キャスト :橋爪功、吉行和子、西村正彦、夏川結衣
上映時間 :108分
今も現役で活躍!日本を代表する映画監督、山田洋次の映画人生と松竹おすすめの作品は別の記事でも紹介しています。
▼巨匠「山田洋次」監督の映画づくりと新作・名作を要チェック!
6. 喜劇・女は度胸(1969年)
『ペコロスの母に会いに行く』などの名作を放った喜劇の名手、森﨑東の監督デビュー作。
ぐうたらな父、内職に熱心な母、粗暴な兄との暮らしにウンザリしている文学青年が、清楚な女子に恋をした。ところが、彼女がコールガールであるという疑惑が持ち上がり、彼の心をやきもきさせる……。ケンカばかりしている父と息子たちに対して、女性キャラはタイトルどおり肝が据わっており、人間のおかしさがジワリ。渥美清ふんする兄のぶっきらぼうなセリフにも吹き出しそうになる。
作品情報
公開(年):1969年
ジャンル :コメディ
監督 :森﨑東
キャスト :倍賞美津子、沖山秀子、河原崎健三、渥美清
上映時間 :90分
7. 喜劇・大安旅行(1968年)
瀬川昌治監督と主演のフランキー堺のコンビで、後に“喜劇 旅行”シリーズとして全11作が作られたドタバタ劇。
主人公は、新婚旅行中のラブラブな乗客に当てられっぱなしの列車の車掌。そんな彼も、行きつけの寿司屋の娘を何とか口説こうと奮闘していた。しかし、男やもめで同じく鉄道員の父も、彼女に思いを寄せていて……。親子の恋のさや当てはもちろん、奇人カップルをはじめとする列車内の人間模様もコミカルで爆笑必至!
作品情報
公開(年):1968年
ジャンル :コメディ
監督 :瀬川昌治
キャスト :フランキー堺、伴淳三郎、新珠三千代、倍賞千恵子
上映時間 :98分
『喜劇・女は度胸』や『喜劇・大安旅行』が公開された1960年代。この時代を代表するおすすめの松竹作品はこちらの記事でも紹介しています。
▼関連記事:1960年代は名作邦画(日本映画)の宝庫!?昔を振り返る松竹作品15選
8. 破れ太鼓(1949年)
『カルメン故郷へ帰る』などの名作で戦後の邦画史を牽引した名匠、木下惠介の家族ドラマ。
一代で財を成した土建屋のワンマン社長、軍平は家でも強権的で、子どもたちをウンザリさせている。やがて我慢できなくなった子どもたちは次々と家を出て、ついには妻も離れて行ってしまい……。時代劇のスターだった阪東妻三郎をあえて現代劇に起用し、頑固オヤジを演じさせる妙。腫れ物に触るように父に接する家族のぎくしゃくした空気が面白い。
作品情報
公開(年):1949年
ジャンル :コメディ
監督 :木下惠介
キャスト :阪東妻三郎、村瀬幸子、森雅之、宇野重吉
上映時間 :109分
木下惠介監督作品が複数公開された1950年代のおすすめ作品はこちらの記事でも紹介しています。
▼邦画(日本映画)の全盛期!1950年代の映画史と松竹作品15選
9. 超高速!参勤交代(2014年)
江戸時代、通常は8日かかる参勤交代を4日で遂行せよというお達しが、東北の小藩に下された。背後には、無理難題を押し付けて藩の金山を我が物にしようとする老中の陰謀が。金もなければ人もいない、そんな状況下、藩主らはこれを遂行しようと奇想天外な作戦に打って出る!近道は当たり前、フェイク行列をつくるわ、忍者を雇うわの、あの手この手に思わずニヤリ。続編『超高速!参勤交代 リターンズ』ともあわせて楽しみたい。
作品情報
公開(年):2014年
ジャンル :時代劇
監督 :本木克英
キャスト :佐々木蔵之介、深田恭子、陣内孝則、西村雅彦
上映時間 :119分
10. 私がモテてどうすんだ(2020年)
別冊フレンドに連載された、ぢゅん子の人気コミックを映画化。イケメン同士の恋を妄想するのが大好きな女子高校生が、大好きなアニメキャラの死にショックを受けて寝込んだら、激ヤセして美人に!たちまちモテ始めたものの、自分の恋に無頓着だった彼女は相も変わらず、言い寄ってくるハンサムな男子生徒たちのBLを妄想し……。歌やダンスが盛り込まれ、恋騒動がアッパーな空気とともに刻まれていく。『HiGH&LOW』シリーズの脚本家、平沼紀久監督の軽快な演出が光る。
作品情報
公開(年):2020年
ジャンル :コメディ、恋愛
監督 :平沼紀久
キャスト :吉野北人、神尾楓珠、山口乃々華、戸田菜穂
上映時間 :90分
11. お早よう(1959年)
松竹伝統の下町喜劇を、現代の新興住宅地に舞台を置き換えて生き生きと描いた名匠、小津安二郎の群像コメディ。多摩川沿いの住宅地に住む子どもたちは大相撲と、オナラ遊びに夢中。自宅にテレビがないので、相撲は近所の家で見せてもらっており、親にテレビをねだっても買ってもらえない。そこで子どもたちは、ある作戦に打って出る。ご近所づきあいの親たちの奮闘に加え、放屁を遊びに変える子どもたちの屈託のなさに頬が緩む。
作品情報
公開(年):1959年
ジャンル :コメディ
監督 :小津安二郎
キャスト :佐田啓二、久我美子、笠智衆、三宅邦子、設楽幸嗣
上映時間 :94分
世界の映画界を魅了した小津監督の映画人生と松竹おすすめの作品は別の記事でも紹介しています。
▼2023年に生誕120年を迎える小津安二郎。世界を魅了する映画作りの秘密
12. 白昼堂々(1968年)
直木賞作家、結城昌治の同名小説を映画化した犯罪喜劇。
炭鉱夫として堅気の仕事に就くも廃坑の憂き目に遭い、一念発起して万引き集団を組織した元天才スリ。上京して大手デパートを股にかけ、次々と大仕事を成し遂げていく彼らだったが、警察の包囲網は着実に迫り……。渥美清ふんする主人公の他、万引きチームの面々のキャラがしっかりと立ち、それぞれに味のある活躍ぶりを披露。倍賞千恵子ふんするヒロインとの恋騒動もお楽しみ!
作品情報
公開(年):1968年
ジャンル :コメディ
監督 :野村芳太郎
キャスト :渥美清、倍賞千恵子、藤岡琢也、有島一郎
上映時間 :99分
13. いい湯だな全員集合!!(1969年)
ザ・ドリフターズの主演で人気を博した“全員集合!!”シリーズの一編。強盗の濡れ衣を着せられたことで人生に嫌気がさし、ハードボイルドに生きようと決意した5人の男たち。北海道の温泉街に流れ着き、温泉宿の女主人に用心棒として雇われた彼らは、逆に女主人の財産をせしめようと画策するが……。いかりや長介ふんする鬼チームリーダーにハードボイルド学を叩きこまれ、しごかれるメンバーたち。そのかけあいが絶妙で、爆笑させられること必至!
作品情報
公開(年):1969年
ジャンル :コメディ
監督 :渡辺祐介
キャスト :ザ・ドリフターズ、生田悦子、早瀬久美、犬塚弘
上映時間 :89分
14. 運が良けりゃ(1966年)
名匠、山田洋次が複数の古典落語を組み合わせて生み出した時代喜劇。
江戸時代、向島の裏長屋に住む左官の熊は、相棒の八とともに気ままな日々をおくっている。貧乏暮らしの強みで失うものは何もなく、長屋の賃料値上げにもどこ吹く風。荒っぽいが情には厚く、長屋の仲間のためなら無茶もする!貧しくもバイタリティにあふれた庶民の一年をたどりながら、ケンカや無銭飲食などの珍騒動を活写。後の『男はつらいよ』のプロトタイプというべき、「ぶっきらぼうな兄と器量良しの妹」という構図にも注目を。
作品情報
公開(年):1966年
ジャンル :時代劇
監督 :山田洋次
キャスト :ハナ肇、倍賞千恵子、犬塚弘、藤田まこと
上映時間 :91分
15. 馬鹿まるだし(1964年)
山田洋次監督が自身の喜劇スタイルを確立したと評される、キャリア初期の秀作。
瀬戸内の静かな町に流れ着いた復員兵が、お寺の未亡人にひと目惚れ。度胸と腕っぷしで町のボスとなり、人々に頼られる彼だったが、この恋だけはどうにもうまくいかない。そんなある日、町で凶悪な事件が発生し……。おだてに乗りやすい主人公のお調子者っぷりが笑いのカギに。主演のハナ肇を筆頭に、クレイジーキャッツの面々が出演してユーモアを引き立てる。
作品情報
公開(年):1964年
ジャンル :コメディ
監督 :山田洋次
キャスト :ハナ肇、三井弘次、渥美清、桑野みゆき
上映時間 :87分
自宅で手軽にコメディ映画を見よう
今や過去の名作を気軽かつ手軽に、自宅で楽しめる時代。DVDやブルーレイなどの映像ソフトに加え、動画配信サービスも充実しています。気になるコメディ作品を見つけたら、自宅で遠慮なく大笑いしてしまいましょう!
まとめ
コメディというジャンルはじつに多彩で、スラップスティック(※2)でバカバカしいノリが魅力の作品もあれば、風刺の効いたブラックコメディもあります。その点、松竹の作品は、はじめに人間ドラマありきで、そこにおかしさがにじみ出るコメディがそろっています。不器用で愛すべきキャラクターたちの奮闘のドラマは、笑えるだけでなく、ときには涙で彩られることも。いずれにしても、明朗なコメディは生きる活力をあたえてくれるもの。コメディの秀作から、元気をもらってはどうでしょう?
※2:アメリカのマック・セネットが作った喜劇のスタイルで「スラップスティックコメディ」とも呼ばれる。体を使ったギャグが含まれた「どたばた喜劇」を指す。
この記事を書いた人
相馬学
1966年、秋田県生まれ。情報誌の編集を経てフリーライターとなり30年。「SCREEN」「DVD&動画配信でーた」などの雑誌や劇場パンフレットなどの紙媒体、「シネマトゥデイ」「ぴあ映画生活」「CINEMORE」「Re:minder」などのインターネット媒体で取材記事やレビュー、コラムを執筆。
※おすすめ作品は松竹の担当者が選びました。