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1960年代は名作邦画(日本映画)の宝庫!?昔を振り返る松竹作品15選

2023.09.13

1960年代 映画(邦画)

はじめに

古い日本映画に興味はあるけれど、何からチェックしてみたらいいのかわからない。そんな人のために、100年以上の歴史を誇る映画会社、松竹の作品の中からおすすめの作品を厳選して紹介していきます。

今回ピックアップするのは、日本映画史上最高の製作本数を記録した1960年代の作品のなかから選んだ15本。1960年代にはこんなにも完成度の高くて斬新な映画の数々が誕生していたのか!という驚きを感じ、邦画の世界をさらに深掘りしたくなるはずです。

 

1960年代の日本映画界の状況と邦画作品の特徴は?

1960年代 邦画作品の特徴

1960年代の大きな転換点といえば、アジア地域で初めて開催された1964年の東京オリンピック。戦後の復興と高度成長期の象徴ともいえる東京オリンピックは、東京の景色のみならず、大衆娯楽の形を大きく変えた出来事です。

1960年代は松竹、東宝、大映、新東宝、東映といった大手映画会社がそれぞれの個性を生かしてしのぎを削り、数多くの作品とスターを世に送り出していた時代。強固なスタジオ・システムに支えられ、1960年に製作された作品は実に547本。日本映画史上最高の作成本数を記録しました。

しかし皇太子の結婚や東京オリンピックを契機にさらに普及したテレビによって、人々の娯楽の中心はスクリーンからブラウン管へ。1963年には観客動員数もピーク時の1958年の半数以下である5億人にまで落ち込んでいます。

産業としては縮小傾向となった邦画界ですが、黒澤明の『用心棒』『椿三十郎』、小津安二郎の『秋日和』『秋刀魚の味』など日本が世界に誇る巨匠たちの作品を筆頭に、数多くの名作も作られました。

また1960年代には、それまでの映画界とは大きく異なるうねりが起こっています。それが「松竹ヌーベルバーグ」と呼ばれるムーブメント。ゴダールやトリュフォーらがフランスでヌーベルバーグ(新しい波)を起こしたように、日本でも若き才能たちが政治や犯罪、性といったテーマに果敢に大胆に切り込み、それまでの映画の文法に縛られない作品の数々を発表したのです。皮切りとなったのは、大ヒットを記録した大島渚監督の『青春残酷物語』。篠田正浩監督(『乾いた湖』『乾いた花』)、吉田喜重監督(『ろくでなし』『甘い夜の果て』)の3人が残した作品は今もなお、世界の映画作家たちに大きな影響を与えています。

 

松竹担当者が選ぶ!1960年代おすすめの邦画(日本映画)15選

すでに高い評価を得ていた巨匠の作品から、新しい時代の風を感じさせる監督の作品。そして異色の特撮モノまで、様々なジャンルの名作が生まれた1960年代。数ある作品の中から、松竹担当者がおすすめしたい15本の邦画作品をセレクトしました。

1. 青春残酷物語(1960年)

20代の大島渚監督が手がけ、大ヒットを記録した長編第2作。虚無感を抱えた大学生の清(川津祐介)と生意気な女子高生(桑野みゆき)が出会い、中年相手に美人局を仕組んで刹那的な青春の日々を送る。大島渚監督は安保闘争の時代の敗北感を漂わせながら、ノンポリ(※1)な若者の無軌道で破滅的な青春を描き切った。「俺たちは自分を道具のように売って生きていくしかないんだ」という叫びが耳に残る、陰りのあるエネルギーが充満した青春映画の傑作。

※1:ノンポリとは「nonpolitical」の略称で政治運動に関心が無いことや、関心がない人を指す

作品情報

公開(年):1960年

ジャンル :青春ドラマ

監督   :大島渚

キャスト :桑野みゆき、川津祐介、久我美子、渡辺文雄、田中晋二

上映時間 :99分

 

2. 秋日和(1960年)

秋日和

小津の『晩春』では父離れできずに結婚に踏み切れない娘を演じていた原節子が、この作品では娘のアヤ子(司葉子)の婚期を心配する母、秋子に。互いを思い合う母娘の描写はしっとりしているが、かつてマドンナだった秋子との再会にときめく紳士3人組が登場すると、画面がコミカルに弾む。とりわけアヤ子の同僚の百合子(岡田茉莉子)とのやりとりは愉快痛快。母娘のことについて詰め寄り、ちゃっかり実家の寿司屋でごちそうさせる跳ねっ返り娘のキュートさは尋常ではない。今見ても新鮮なパーティドレスなど、森英恵による衣装にも目を奪われる。

作品情報

公開(年):1960年

ジャンル :人間ドラマ

監督   :小津安二郎

キャスト :原節子、司葉子、佐田啓二、岡田茉莉子、笠智衆、佐分利信

上映時間 :128分

 

3. 永遠の人(1961年)

阿蘇山麓の村。愛する人(佐田啓二)とは結ばれず、自分を犯した大地主の息子(仲代達矢)の嫁となった小作人の娘(高峰秀子)。約30年にわたって激しくぶつかり合う夫婦の姿を、木下惠介が5幕構成で描いた。ユニークなのは、渦を巻くような内面のざわめきや怒りをフラメンコギターの音で表現していること。熊本弁で歌われるトンチキなフラメンコの斬新さにも度肝を抜かれ、いつの間にかドロドロの愛憎劇に引きずり込まれる。憎しみの先に希望のようなものも見える、米アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作。

作品情報

公開(年):1961年

ジャンル :人間ドラマ

監督   :木下惠介

キャスト :高峰秀子、佐田啓二、仲代達矢、石橋朗、乙羽信子

上映時間 :107分

 

4. ゼロの焦点(1961年)

松本清張の傑作ミステリー小説を、『張込み』『砂の器』などでも知られる野村芳太郎監督が映画化。出張先で姿を消した夫を追って金沢へ向かった新妻(久我美子)が、行方を探すうちに夫の過去を知る。謎解きの先にやがて浮かび上がってくるのは、戦後の混沌とした時代を自分の足で生き抜こうとした、たくましくも哀しい女の物語。もうひとりの主人公は北陸の荒々しい風景だろう。2時間サスペンスの原点ともいうべき断崖絶壁のシーンが胸に迫る。

作品情報

公開(年):1961年

ジャンル :サスペンス

監督   :野村芳太郎

キャスト :久我美子、高千穂ひづる、有馬稲子、加藤嘉

上映時間 :95分

 

5. 秋刀魚の味(1962年)

娘の嫁入りは、小津安二郎が何度も描いているテーマ。

遺作となったこの作品では、亡き母にかわって父(笠智衆)と兄(三上真一郎)の面倒を見ている娘、路子の結婚が描かれる。初老の仲良し紳士3人組のおしゃべりで笑わせつつ、「軍艦マーチ」が流れるシーンには戦争の影も。これは家族の物語であり、戦後を生きる人たちの物語でもあるのだろう。路子を演じるのは、『秋日和』で小津に「10年にひとりの逸材」と目をかけられた岩下志麻。白無垢を纏った彼女は、息を飲むほど美しい。

作品情報

公開(年):1962年

ジャンル :人間ドラマ

監督   :小津安二郎

キャスト :岩下志麻、笠智衆、佐田啓二、岡田茉莉子、吉田輝雄、三上真一郎、杉村春子、加藤大介

上映時間 :113分

 

6. 切腹(1962年)

切腹

寛永7年。ひとりの浪人(仲代達矢)が、切腹するために庭を拝借したいと井伊家の屋敷を訪れる。家老(三國連太郎)は申し出を受けるが、浪人には事情があった。『人間の條件』など社会派で知られる小林正樹が、武家社会の理不尽さをあぶり出す時代劇。橋本忍の脚本の特色ともいえる回想シーンが巧みに織り交ぜられ、最後まで緊張の糸が途切れないミステリーを観ているかのよう。俳優陣の対峙、真剣を使った殺陣などすべてに気迫が満ちあふれ、1960年代の邦画の底力を存分に感じさせてくれる。カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞作。

作品情報

公開(年):1962年

ジャンル :時代劇

監督   :小林正樹

キャスト :仲代達矢、三國連太郎、石浜朗、岩下志麻

上映時間 :134分

 

7. 秋津温泉(1962年)

秋津温泉

岡田茉莉子映画出演100本目を記念して、自らがプロデュース。後に夫となる吉田喜重が監督を務めた。温泉旅館の娘、新子(岡田茉莉子)が惹かれ合ったのは、結核の療養のためにやって来た周作(長門裕之)。やがて周作は他の女と結婚し、新子はその後、幾度か秋津温泉を訪れる彼を忘れることができない。成瀬巳喜男監督の『浮雲』と双璧をなす、男と女の17年間を描いた堂々たるメロドラマ。しかし岡田茉莉子があまりにも美しすぎるため、この男はまったく見込みがないから早く目を覚まして……!というもどかしい気持ちにもさせられる。

作品情報

公開(年):1962年

ジャンル :恋愛

監督   :吉田喜重

キャスト :岡田茉莉子、長門裕之、芳村真理、清川虹子、東野英治郎、山村聰

上映時間 :112分

 

8.  下町の太陽(1963年)

石鹸工場で働く下町の娘を主人公に、若者たちの姿をスケッチした山田洋次監督の初期の作品。倍賞千恵子が歌う「下町の太陽」のヒットにより企画された作品だけに、荒川の土手を歩きながら透き通った歌声を聴かせる場面も登場する。多くの若者にとって郊外の団地に住むことが夢だった時代、ヒロインは友達に「どうしてお金、お金って言うのさ?」と問う。結婚したいのはサラリーマンか会社を立ち上げる気概のある男か…、ガールズトークのトピックは今とそれほど変わらないかもしれない。

作品情報

公開(年):1963年

ジャンル :人間ドラマ

監督   :山田洋次

キャスト :倍賞千恵子、勝呂誉、早川保、田中晋二

上映時間 :86分

 

9. 拝啓天皇陛下様(1963年)

身寄りも学もない一兵卒のヤマショウこと正助にとって、軍隊は三度の食事にありつける天国のような場所。戦争が終わるという噂を聞いた彼は「トウキョウシ テンノウヘイカサマ」と天皇陛下に手紙を書く。『男はつらいよ』シリーズに出演する前の渥美清の代表作のひとつ。イデオロギーではなく、庶民が身を置いた軍隊のある側面を描いたこの映画には、朗らかさと哀しさが同居している。語り部でもあるムネさん(長門裕之)との戦中戦後にわたる友情も描かれ、ふたりのバディ感が作品の縦糸に。

作品情報

公開(年):1963年

ジャンル :人間ドラマ

監督   :野村芳太郎

キャスト :渥美清、長門裕之、中村メイコ、左幸子、高千穂ひづる、藤山寛美

上映時間 :98分

 

10. 香華(1964年)

有吉佐和子の同名小説を木下惠介が映画化した文芸超大作。幼い娘を芸者見習いとして遊郭へ売った母(乙羽信子)が、やがて芸事に精進する娘(岡田茉莉子)の前に花魁となって現れる。男好きで奔放な母は、どこか憎めないからこそやっかいな毒親で、幸せをつかもうとする娘の足を引っ張りまくる。戦前から戦後へと移り変わる激動の時代のなか、ケンカを繰り返しながらも娘は母を捨てることはできない。正反対の母娘の愛憎劇は、女の幸せと自立についてのテキストともいえる。人生の局面を装いで伝える、着物映画としての見応えも。

作品情報

公開(年):1964年

ジャンル :人間ドラマ

監督   :木下惠介

キャスト :岡田茉莉子、加藤剛、三木のり平、乙羽信子、岡田英次、柳永二郎

上映時間 :204分

 

11. 馬鹿まるだし(1964年)

穏やかな瀬戸内海の町にやって来たシベリア帰りの風来坊の安五郎(ハナ肇)。思いを寄せる未亡人(桑野みゆき)にかっこいいところを見せようと、勇ましく脱走犯を追う。『無法松の一生』を思わせるキャラクター、安五郎はすぐにおだてに乗る男。ピュアすぎて空回りする行動の数々が、おかしいやら悲しいやら…。山田洋次監督にとってヒットを記録した初の喜劇で、以降『いいかげん馬鹿』『馬鹿が戦車でやって来る』が製作された。国民的シリーズ“寅さん”の原型とも言えそうな作品。

作品情報

公開(年):1964年

ジャンル :コメディ

監督   :山田洋次

キャスト :ハナ肇、三井弘次、渥美清、桑野みゆき、長門勇、藤山寛美

上映時間 :87分

 

12. 乾いた花(1964年)

石原慎太郎の短編小説を篠田正浩が映画化。殺人罪で3年の刑期を終え、賭場に向かったヤクザの村木(池部良)は、ファムファタール(運命の女)ともいうべき冴子(加賀まりこ)と出会う。賭場のヒリつく空気を伝える大胆なカメラワークと陰影豊かなモノクロの映像には任侠映画の様式美とはまた違う乾いた魅力が宿り、マーティン・スコセッシが惚れ込んだのも納得のフィルム・ノワール(※2)。冒頭では満員電車や街の雑踏が映し出され、東京オリンピックに向けて変わっていく東京の顔が切り取られている。

※2:フィルム・ノワールは虚無的・悲観的・退廃的な要素を持つ犯罪映画のジャンルを指す。

作品情報

公開(年):1964年

ジャンル :人間ドラマ

監督   :篠田正浩

キャスト :池部良、藤木孝、東野英治郎、加賀まりこ、三上真一郎、宮口精二

上映時間 :96分

 

13. 紀ノ川(1966年)

和歌山の裕福な家を舞台に描く、明治、大正、昭和を生き抜いた女の物語。有吉佐和子の同名小説を、文芸もので手腕を発揮した中村登監督が映画化した。古いしきたりのなかで生きる母(司葉子)と、進歩的な考えを持つ娘(岩下志麻)。自転車を乗り回す娘を母が叱り飛ばし、蔵に閉じ込める場面の激しさよ!母が重んじた“家”とは一体何か、男社会のなかで聡明さを失わずにサバイブするには……?『紀ノ川』が描くそんな問いかけは、皮肉なことに令和の時代にも色褪せていない。

作品情報

公開(年):1966年

ジャンル :人間ドラマ

監督   :中村登

キャスト :司葉子、岩下志麻、有川由紀、東山千栄子、田村高廣、丹波哲郎

上映時間 :173分

 

14. なにはなくとも全員集合!!(1967年)

草津のローカル線の新駅長(三木のり平)とバス会社の所長(いかりや長介)の対立を描くコメディ。ベテランの三木のり平がメインとなり、人気絶頂だったザ・ドリフターズが恋愛も絡んだ町の騒動を盛り立てる。喜劇的な動きで笑わせる加藤茶をはじめ若い彼らの活きの良さも見どころとなっている、ドリフ映画の記念すべき第一作目。終盤にはいかりや長介さんの「全員集合!」もしっかり聞けるので、ご安心を(?)。60年代の田舎の景色も相まって、体を張ったドタバタ劇もどこかのんびりムードなのが楽しい。

作品情報

公開(年):1967年

ジャンル :コメディ

監督   :渡辺祐介

キャスト :ザ・ドリフターズ、三木のり平、中尾ミエ、水谷良重、古今亭志ん朝、中村晃子

上映時間 :83分

 

15. 宇宙大怪獣ギララ(1967年)

松竹が手がけた本格的な特撮映画。東宝のゴジラ、大映のガメラ、そして松竹は公募で名前が決定したギララ。SFの要素を盛り込み、宇宙のシーンがたっぷり登場する特撮モノになっている。月面基地内のデザインはまさに昭和レトロで、なんとミスマッチな檜風呂まで!なお、山の向こうから咆哮とともにギララが登場するのは映画が始まって45分以上経過してからなので、ひたすら楽しみに待つべし。赤い目と触角を持つ鳥のようなギララには、クセになるかわいさがある。

作品情報

公開(年):1967年

ジャンル :SF

監督   :二本松嘉瑞

キャスト :和崎俊哉、ペギー・ニール、岡田英次、原田糸子、柳沢真一、藤岡弘

上映時間 :88分

 

まとめ

今とは全く違う価値観や文化、風景に驚いたり、意外にも変わっていない部分を発見して親近感を抱いたり…。1960年代の邦画には、時の波に洗われても色褪せない見どころがたくさん詰まっています。

動画配信サービスのラインナップがどんどん豊富になっている今、再生ボタンを押すだけでそこは名画座に。監督、俳優、題材、映像、何かが少しでもアンテナに触れたら、気軽に観てみてください。そこには、古くて新しい世界が広がっています。

松竹の邦画名作品は別の記事でも紹介しています。

こちらもぜひご覧ください。

 

この記事を書いた人

細谷美香

情報誌の編集を経て、ライターに。新聞や雑誌を中心に映画紹介やインタビューを担当。着物を着るのが趣味なので、日本映画のなかの着こなしを見るのも大きな楽しみのひとつです。

※おすすめ作品は松竹の担当者が選びました。

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