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絶対おすすめ!邦画(日本映画)サスペンス・ミステリーの松竹作品15選
2023.07.31
はじめに
サスペンス・ミステリーは今も昔も人気のジャンル。なんらかの“事件”が起こったとき、その背後には原因や理由があり、それは人の興味を強く引きつけます。人間のさまざまな側面が見えてくるのも、このジャンルの面白いところ。欲望や衝動、憎しみや怒り、エゴ、独善、そして狂気。誰もが心の奥底に抱えているものを、スリルとともに体感させるのは、まさに醍醐味ともいえるでしょう。そんなサスペンス・ミステリーの邦画を紹介。一度は見ておきたい秀作ぞろいです!
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「サスペンス」と「ミステリー」の違いとは
“サスペンス”と“ミステリー”は、しばしば同列で語られますが、厳密には違うもの。基礎知識として、まずはそれを解説します。
「サスペンス」とは
サスペンスとは不安や緊張などの心理状態が続くことを指します。映画のジャンルとして扱われる場合、それは、劇中の登場人物はもちろん、観客の心理状態にもシンクロしてきます。観客の心を“宙づり(=サスペンデッド)”にすることから、この言葉が生まれたとの説もあります。いずれにしても、ハラハラ&ドキドキが味わえるジャンルです。
「ミステリー」とは
ミステリーは“神秘”や“謎”を意味する言葉です。ジャンル的には、いわゆる“謎解き”を主体とする作品、たとえば刑事ものや探偵ものが当てはまります。必然的に、観客の心を宙づりにしてハラハラ&ドキドキさせるので、そこにはサスペンスの要素も生じます。サスペンスとミステリーが同義に扱われやすいのは、そのためですが、このふたつの要素が混在するのも、映画の面白さと言えるでしょう。
泣いて、笑って、恐怖して…。ジャンル別にまとめた松竹おすすめ映画はこちらから確認できます。気になる方はぜひご覧ください。
松竹担当者が選ぶ邦画(日本映画)サスペンス・ミステリー15選
100年以上の歴史を誇る松竹の映画には、高い評価を得たサスペンス・ミステリーが数多くあります。中でもひときわ目立つのは、野村芳太郎監督の作品でしょう。多ジャンルをこなしてきたオールマイティな監督ではありますが、『砂の器』をはじめとするサスペンス・ミステリーで才腕を発揮し、評価されてきたことから、サスペンスの名匠というイメージが強い映画ファンも少なくありません。今回のセレクトでは野村作品が複数選ばれていますが、いずれ劣らぬ名作だけに、ぜひチェックを!
1. ある男(2022年)
第46回日本アカデミー賞で作品賞など8部門を独占したのも記憶に新しい重厚な力作。芥川賞作家、平野啓一郎の同名小説を原作にしている。再婚相手と幸福な家庭を手に入れるも、この夫を事故で亡くした女性。葬儀の場で、亡き夫の疎遠だった兄に、故人が弟ではないと主張された彼女は弁護士に調査を依頼。やがて明らかになる衝撃の事実とは!?
二重生活を送らざるをえなかった人間の哀感を浮きぼりに。俳優陣はいずれも入魂の演技を見せるが、とりわけキーパーソンである“ある男”を演じた窪田正孝の好演が光る。
作品情報
公開(年):2022年
ジャンル :ミステリー、サスペンス
監督 :石川慶
キャスト :妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝、柄本明
上映時間 :121分
2. さんかく窓の外側は夜(2021年)
ヤマシタトモコの人気コミックを映画化したオカルト調のミステリー。霊が見える青年と、霊を祓える除霊師。コンビを組んで心霊探偵業に乗り出した彼らは、不審な連続殺人事件を追ううちに、呪術を駆使する謎の女子高校生と遭遇する。彼女の背後には、政界やカルト教団の影が……。呪いを題材にしたスリリングなドラマが展開。過去の根深い心の傷を抱いている主要キャラクターたちのドラマも面白く、事件を通じてそれぞれが過去に向き合っていく過程に魅了される。
作品情報
公開(年):2021年
ジャンル :ミステリー、サスペンス
監督 :森ガキ侑大
キャスト :岡田将生、志尊淳、平手友梨奈、筒井道隆
上映時間 :102分
3. クリーピー 偽りの隣人(2016年)
ミステリー文学大賞新人賞を受賞した前川裕の小説を映画化。刑事を辞めての犯罪心理学の講師となった男が、妻とともに郊外の静かな住宅地に引っ越してくる。その矢先、彼はふたつの懸案を抱えた。ひとつは6年前に起きた一家失踪事件の真相追及。もうひとつは、娘とふたり暮らしという隣人の挙動不審。やがてそのふたつの関連が明らかになり、男を苦しめていく。他人の心理を悪意とともに操ってしまえる者の恐ろしさに戦慄を禁じ得ない。世界的な鬼才、黒澤清の隙のない演出に加え、香川照之の怪演も目を奪うに十分。
作品情報
公開(年):2016年
ジャンル :サスペンス
監督 :黒沢清
キャスト :西島秀俊、竹内結子、川口春奈、香川照之
上映時間 :130分
4. 天空の蜂(2015年)
人気作家、東野圭吾の原作に基づく、スケールの大きなサスペンス。無人操作を可能にした最先端の大型ヘリコプターの制御権をテロリスト集団が掌握し、日本中の原発の停止を要求してきた。要求が通らない場合は、福井県の原発にヘリを墜落させると脅迫。ヘリの設計技師らは、その阻止に奔走し……。原発に依存する日本社会の問題点を見据えながら、それに関わる人々の人間模様を浮き彫りに。日本はこのままでいいのか!?ハラハラしながら考えてみて欲しい。
作品情報
公開(年):2015年
ジャンル :ミステリー、サスペンス
監督 :堤幸彦
キャスト :江口洋介、本木雅弘、仲間由紀恵、綾野剛
上映時間 :138分
5. 疑惑(1982年)
『砂の器』の最強タッグ、松本清張の原作と野村芳太郎の演出による力作。断崖から海へと転落した車の事故で夫を亡くし、自身は自力で脱出して難を逃れた女性。彼女に恐喝などの前科があり、マスコミが毒婦と騒ぎ出したことから、事件は殺人事件の様相を呈し、やがて彼女は逮捕される。その弁護を引き受けた女性弁護士は調査の過程で、意外な事実を突き止め……。はすっぱでとらえどころのない容疑者と、知的な弁護士という女性ふたりの共闘と葛藤がドラマをタイトに引き締める。
作品情報
公開(年):1982年
ジャンル :ミステリー、サスペンス
監督 :野村芳太郎
キャスト :岩下志麻、桃井かおり、鹿賀丈史、柄本明
上映時間 :127分
『疑惑』が公開された1980年代の松竹おすすめ映画はこちらの記事で詳しく紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
▼昭和を感じる!1980年代の邦画(日本映画)松竹作品15選
6. わるいやつら(1980年)
こちらも原作・松本清張×野村芳太郎監督のタッグ作品。主人公は亡き親から病院長の座を継ぐも、放蕩三昧による赤字を金づるの愛人たちに貢がせてやりくりしている片岡孝夫演じるプレイボーイの男。愛人の夫を殺害し、死亡診断書を偽造しては保険金をせしめる彼だったが、そんな危険な綱渡りにもほころびが生じ始め……。医師の社会的権威を利用し、犯罪に走る男の奔走劇はスリリングそのもの。彼と女性たちの間に生じる愛と葛藤がドラマを緊張感たっぷりに引き立てる。松坂慶子をはじめとする女優陣の、それぞれに個性的な熱演も見どころ。
作品情報
公開(年):1980年
ジャンル :ミステリー、サスペンス
監督 :野村芳太郎
キャスト :片岡孝夫、松坂慶子、梶芽衣子、藤真利子
上映時間 :129分
7. 八つ墓村(1977年)
“たたりじゃ!”のキャッチコピーとともに一世を風靡した、横溝正史のベストセラー小説に基づく大作。舞台は、虐殺された落武者たちの呪いが言い伝えられている中国地方の村。自身のルーツをたどり、ひとりの青年がこの地の名家にやって来る。ところが、そんな彼の前で次々と殺人事件が起こり……。『丑三つの村』でも描かれた実話“津山30人殺し”をモチーフにしつつ、殺人ミステリーをオカルト風に展開させる。名探偵、金田一耕助役に、『男はつらいよ』でおなじみの渥美清が挑んでいる点も見逃せない。
作品情報
公開(年):1977年
ジャンル :ホラー・ミステリー・サスペンス
監督 :野村芳太郎
キャスト :萩原健一、小川真由美、山﨑努、渥美清
上映時間 :151分
サスペンスとホラーは紙一重!?松竹おすすめのホラー作品はこちらの記事で詳しく紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
8. 鬼畜(1978年)
原作・松本清張と野村芳太郎監督のコンビによる、家族を題材にした壮絶なドラマ。後のTVドラマ化でも有名になったが、映像化の原点は本作だ。愛人との間に生まれた3人の子どもを引き取るハメになった気弱な男。正妻はそれを許さず、よそ様の子どもを育てる気など毛頭ない。困った男は、子どもたちを“処理”しようと奔走するが……。どんな人間も状況次第で残酷になる。そんな暗い本性を浮き彫りにしたストーリーに、打ちのめされるに違いない。
作品情報
公開(年):1978年
ジャンル :ミステリー
監督 :野村芳太郎
キャスト :緒形拳、岩下志麻、蟹江敬三、大竹しのぶ、小川真由美
上映時間 :110分
9. 砂の器(1974年)
松本清張原作作品の最高傑作にして、邦画を代表する名編。東京の列車操車場構内で、男性の他殺死体が発見された。捜査は難航するが、ふたりの刑事が執念深く調査を続け、小さな新聞記事から銀座のバーにたどり着き、どこか陰のあるホステスや常連客である天才音楽家の存在を知る。彼らの周辺調査から浮かび上がった、意外な事実とは!?
謎を散りばめた前半から、事件の全ぼうを明かす後半へ。原作では数行だった親子の放浪を、日本の四季の風景とともに描き、親子の情愛や宿命を浮かび上がらせた回想シーンは、芥川也寸志の美しい音楽の効果もあり、涙なしには見られない。
作品情報
公開(年):1974年
ジャンル :サスペンス
監督 :野村芳太郎
キャスト :丹波哲郎、森田健作、加藤剛、加藤嘉
上映時間 :143分
10. ゼロの焦点(1961年)
高評価を得た『張込み』に続き、野村芳太郎監督が松本清張のベストセラー小説の映画化に挑んだ名作。出張先の金沢で謎の失踪を遂げた夫を追い、東京から能登へやってきた妻。太平洋戦争を経て厳しい時代を生きて来た、そんな夫の過去がやがて明らかになる……。高度経済成長期の浮かれた空気の陰には、積み重ねられてきた重くて苦い過去がある。そんな当時の社会の現実を見据えたドラマは歯応え十分。断崖絶壁でのクライマックスまで目が離せない。
作品情報
公開(年):1961年
ジャンル :サスペンス
監督 :野村芳太郎
キャスト :久我美子、高千穂ひづる、有馬稲子、加藤嘉
上映時間 :95分
名作サスペンス映画を数々生み出した野村芳太郎監督の作品はこちらから確認できます。時代背景を感じる作品を多く取り上げていますのでぜひご覧ください。
11. 顔(1957年)
松本清張の原作に基づく映画は、これまで30本以上が製作されているが、記念すべき第一作目が本作。堕胎医が夜行列車から転落死する事件が発生。その葬儀に謎の女性から花束が届けられたことから、刑事は他殺の線で捜査を進める。その頃、花束の送り主であるファッションモデルの女性は、事故の現場を見たという男の出現に動揺し……。並々ならぬ苦労して現在の地位を得た者には、往々にして消し去りたい過去がある。そんな人間模様を浮き彫りにした力作。
作品情報
公開(年):1957年
ジャンル :ミステリー、サスペンス
監督 :大曾根辰夫
キャスト :大木実、岡田茉莉子、笠智衆、森美樹
上映時間 :105分
12. 白ゆき姫殺人事件(2014年)
原作は湊かなえの同名小説。化粧品会社のOLが殺され、事件後にその同僚の女性が行方をくらませた。TVのワイドショーは、この同僚を犯人と断定して番組内やSNSを通じて叩き、情報を求め続ける。メディアによって悪に祭り上げられた、この女性は本当に殺人犯なのか?
正しい情報も誤った情報も無責任に拡散される現代。メディアによって追い込まれていく女性の苦境が訴えるメッセージは大きい。そんな社会派の要素に注目しつつ、謎解きのスリルを体感して欲しい。
作品情報
公開(年):2014年
ジャンル :ミステリー、サスペンス
監督 :中村義洋
キャスト :井上真央、綾野剛、菜々緒、染谷将太
上映時間 :126分
邦画は隠れた名作ぞろい!日本映画の隠れた名作については、こちらの記事で詳しく紹介しています。気になる方はあわせて見てみてくださいね。
▼隠れた名作邦画(日本映画)はこれ!見逃し注意の松竹作品16選
13. ソロモンの偽証(2015年)
直木賞作家、宮部みゆきの大作小説を映画化。劇場では「前篇・事件」と「後篇・裁判」の2部作として公開された。とある中学校で起こった男子生徒の転落死事件。警察は自殺と断定するが、学校関係者に届いた匿名の告発状は他殺を訴えていた。自分たちの手で真相を探ろうと、クラス委員を務める2年生の少女が、学校内裁判を開廷することに……。裁判の過程で次々と意外な事実が明かされ、混沌としていく物語は、まさにスリリング。生徒や教師、父兄の抱えるそれぞれのドラマも歯応えアリ。
作品情報
公開(年):2015年
ジャンル :ミステリー、サスペンス
監督 :成島出
キャスト :藤野涼子、板垣瑞生、石井杏奈、清水尋也
上映時間 :121分
ソロモンの偽証 前篇・事件を見る
ソロモンの偽証 後篇・裁判を見る
14. 人魚の眠る家(2018年)
東野圭吾の原作に基づく社会派のドラマ。娘の小学校受験を終えたら離婚することにしていた夫婦。ところが、娘がプールで事故に遭い、脳死状態に陥ってしまう。離婚を取りやめた夫婦は娘の介護に尽力。夫は自身が経営する医療器具会社の研究者を招き、娘の意識が戻ることに賭けるが……。愛する者が脳死してしまったとき、人はどんな行動をとるのか?脳死者を生かすのはエゴではないのか?緊張感を盛りたてる夫婦の葛藤のドラマは、そんな問いを投げかけてくる。
作品情報
公開(年):2018年
ジャンル :ミステリー、サスペンス
監督 :堤幸彦
キャスト :篠原涼子、西島秀俊、坂口健太郎、松坂慶子
上映時間 :120分
15. シャイロックの子供たち(2023年)
『空飛ぶタイヤ』に続き、本木克英監督が池井戸潤のベストセラー小説を映画化。大手銀行の支店で発生した現金紛失事件。お客様係を務めるベテランの行員が同僚たちとともに、調査に当たる。そこに浮かび上がる、成績優秀な行員たちの不正行為。しかし事態はそれに止まらず、メガバンクをも揺るがす不祥事の発覚へと広がっていく……。銀行員も人の子で、大金を扱うと気も迷う!?
そんな人間の弱さを見据えたサスペンスが展開。緊張感はもちろん、主演を務めた阿部サダヲの人間味あふれる演技にも魅了される。
作品情報
公開(年):2023年
ジャンル :ミステリー、サスペンス
監督 :本木克英
キャスト :阿部サダヲ、上戸彩、玉森裕太、柳葉敏郎
上映時間 :122分
ドキドキを手軽に楽しむなら、オンデマンドやDVDで!
DVDやブルーレイなどの映像ソフトの充実はもちろん、動画配信サービスも充実したことで、サスペンス・ミステリーの過去の名作にも気軽に触れられるようになりました。気になる作品を見つけたら、すぐに探してみてはいかがでしょうか?
まとめ
優れたサスペンス・ミステリーは、繰り返し見ても楽しめるもの。結末を知って改めて作品を見直すと、真相への伏線が張られているなどの巧妙なディテールに気づくこともあります。もちろん、人間ドラマの感動も2度、3度と味わえます。緊張を楽しみながら、サスペンス・ミステリーの醍醐味を堪能してみてください。
この記事を書いた人
相馬学
1966年、秋田県生まれ。情報誌の編集を経てフリーライターとなり30年。「SCREEN」「DVD&動画配信でーた」などの雑誌や劇場パンフレットなどの紙媒体、「シネマトゥデイ」「ぴあ映画生活」などのインターネット媒体で取材記事やレビューを執筆。
※おすすめ作品は松竹の担当者が選びました。