©1956 松竹株式会社
早春
- 公開年月日
- 1956年1月29日
- キャスト
- 淡島千景
池部良
高橋貞二
岸惠子
笠智衆
山村聰
藤乃高子
田浦正巳
杉村春子
浦邊粂子
三宅邦子
東野英治郎
三井弘次
加東大介
- スタッフ
- 脚本:野田高梧/小津安二郎
監督:小津安二郎
撮影:厚田雄春
照明:加藤政雄
美術:濱田辰雄
音楽:齋藤高順
- 区分
- 邦画
- ジャンル
-
人間ドラマ
- 本編尺
- 144分
- カラー
- モノクロ
- 製作国
- 日本
- 製作年
- 1956年
Introduction(作品紹介/概要)
通勤電車で顔なじみの丸の内勤めの男女が織りなす哀歓に満ちた人間模様。一児を亡くしてから妻との関係に隙間風が吹く杉山(池辺良)とそんな彼を愛する現代娘(岸惠子)の不倫を主軸に、戦後10年が過ぎたころのサラリーマンや若者の心情を、小津安二郎監督は活写している。
Story(あらすじ)
倦怠期を迎えた夫婦の危機をシリアスに描いた小津監督の意欲作。サラリーマンの正二(池部良)と妻・昌子(淡島千景)は共働きの夫婦。数年前に病気で子供を失って以来、倦怠期を迎えていた。そんななか、正二は毎日の通勤列車に乗り合わせる仲間のひとり、千代(岸惠子)と過ちを犯し、ふたりは深い関係になっていく。そのことに気づいた昌子は家を出てしまう・・・。「お茶漬の味」同様、夫婦の危機をテーマとし、また、過去に何度も描いてきたサラリーマンの悲哀もあいまって戦後の小津作品の中でもシリアスな内容となっている。
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「早春 」のちょっといいセリフ
いろんなことがあって
だんだんほんとうの夫婦になるんだよ
- セリフを選んだ理由
- 数年前に幼い息子を病気で亡くして以来、倦怠期を迎えていたサラリーマンの正二(池辺良)と昌子(淡島千景)の夫婦は、正二が女友達・キンギョこと千代(岸恵子)の積極的な誘惑に負け、犯してしまった一晩の過ちが発覚し、夫婦関係の危機を迎えていました。最初はとぼけて煙に巻く正二でしたが、怒りのあまり家を出たきり戻らない昌子の強硬な姿勢に、焦りと反省、贖罪の気持ちで心がいっぱいになります。そんな中、東京から遠く岡山の山間地へと転勤を命じられていた正二の引っ越しの日が近づきます。結局引っ越し当日になっても昌子は戻らず、独りさびしく旅立った正二は、旅の途中、転勤で琵琶湖畔に住まう会社の先輩・小野寺(笠智衆)を訪ねます。
このセリフは、正二と昌子の結婚の仲人を務め、ふたりをよく知る小野寺が、正二にしみじみと、噛んで含めるように言った一言です。悪行は、開き直ったり、ましてや繰り返すなど論外です。素直に謝り、猛省すること。諍いの火種はまだ小さいうちに、取り返しのつくうちに歩み寄って消すこと。それでも色んな摩擦が起きるかもしれないし、負った心の傷は消えないかもしれないが、それを乗り越えることが夫婦をより強靭な関係に導いてくれること。負った心の傷は、完全には消えません。ただ、それでも心から謝り、誠意を示すこと。また可能な限り許そうと努力すること。そうして至った再生が、夫婦愛の成熟したかたちなのではないか?人生の先輩の含蓄が、味わい深く心に沁みます。